投資禅の企業分析徹底ガイド

06/18 10:23
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はじめに

この度は、投資禅による株式投資をする際の、企業分析の仕方を分かりやすく解説したガイドを手にとっていただき誠にありがとうございます。このレポートは、高配当株による中長期投資をご提案する投資禅による、皆様がご自身の判断で銘柄選定ができるようご支援するために作成したものです。

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ロゴ(引用:投資禅【Forget the money】https://www.youtube.com/@toushizen)

私は銀行と証券会社にて主に個人のお客様に対しての資産運用の提案やフォローを中心に行ってきました。また自身も15年以上の投資経験があります。自ら学んできた知識や経験を活かしてお客様をフォローしてきましたが、そういった仕事の中で金融機関は顧客の利益よりも自社の利益を優先するスタンスが強く、収益のためなら相場の流れを無視して高い手数料を稼げる商品の販売を積極化したりと、本当に顧客のためになる提案ができないと理解しました。

私はこれまで株式投資を理解するために経済や金融について学んできました。またお金とは何かを知るためにお金に関する著作を数多く読み漁り、その流れから不要なもの、無駄なものを省き、大事なものに集中するという禅の考え方を組み合わせて投資を理解したのです。そしてこれらの知識をより多くの方に提供するために「投資」と「禅」を単純ですが足し合わせて「投資禅」というYoutubeチャンネルを開設しました。

副題になっている【Forget the money】というのは、言葉通りの意味で『お金のことは忘れてしまおう』というものです。これにはお金よりも大事なものがあるという意味もありますが、中長期の株式投資自体がお金の執着から離れるための修行なんだ、という認識を持ったためにつけた言葉でもあります。投資は余裕資金でやるべき、というのは誰もが聴く言葉だと思いますが、そうはいっても投資した株式や投資信託などの評価額を気にしてしまう人が大半だと思います。中長期で投資を継続するには、評価額を逐一気にしていると長続き出来ません。

株価が上がっているときは誰も気にしませんが、問題は株価が下がって評価損が出ている時です。人間には「損失回避」という特性があり、利益よりも損失の方が倍の心理的影響が大きく感じるように出来ています。本来は外的な危険に対して予防的な反応をするための仕組みなのですが、これが株式投資では悪い方に発動してしまうわけです。中長期で投資をするならば、株価は上がる時もあれば必ず下がる時もあります。その度に大きな心的ショックを受けていたらとても中長期で投資なんて続きません。

なので評価損になってショックを受けるのは人間として当然の機能なのではありますが、それでは続かない、ではどうすれば良いのか、というと、一般的にはだからこそ余剰資金でやりましょうとなります。もともと当分使い道のない資金であれば、一時的に減ってもそこまで生活に影響がないからです。これはもちろん大前提の話です。生活費までかけてしまうと、損失を被った時に生きていくことが困難になってしまいますので、これは絶対に避けなければいけません。

また、そうは言ってもやはり自分の資産が減っていくのは不安になってしまう、という方もやはり沢山いらっしゃいます。なのでこのレポートでは、本題の企業分析に入る前に2つのお話をさせていただきたいと思います。評価損を気にしなくなるということは、ある意味お金の執着を手放す必要が出てきます。まず株式投資はお金の執着から離れるための修行と前述したのですが、これを理解した一つのエピソードがあります。とはいっても禅僧の方がお話ししていたものなので、自分が体験したわけではないのでご了承ください。

あるお寺に会社の経営者が相談に来られました。その経営者の会社は業績が伸びずに事業に行き詰まっていました。その経営者に対してお寺の住職さんは、この寺のご主人は御本尊様なので、私に挨拶をする前にまず御本尊様に挨拶に行ってくださいと言いました。経営者は御本尊に手を合わせて、目の前にある賽銭箱に賽銭を投げたのですが、その時に財布の中身を無意識に確認しながら、コインを選んで投げました。それを見た住職が経営者に一喝します。

「あなたは人生がどん底になって、事業に行き詰まって仏の教えを聞きにきて、仏様の前で、まだ金銭の価値判断をしているのか、まだ損得を考えているのか」と。

この話を聞いた時に、それって投資も同じじゃないかと思ったのです。この後説明して行きますが、株式投資の利益はその企業が稼いだ純利益から支払われます。なのでそもそも数ヶ月などで利益を享受できるわけがなく、株価の上がった下がったで利鞘を狙うのはただと投機、ギャンブルです。そうではなく投資をするのであれば、企業が利益を生み出し、還元されるまでそれなりの時間を要するわけです。であれば、投資した資金は無いものくらいに思っていないと、中長期で保有するなんて出来ない、株価が下落していく中で冷静に保有出来ないです。投資した資金は無かったものにするくらいじゃないといけないんだと思いました。

そうは言ってもお金を増やすためにやってるんだから、損益を気にしてしまうのは当然じゃないかと思われる方も多いと思います。ただこれに対してもお話しすると、そもそも論として、株式を保有するということは、ただ儲けるためにやるわけではないということです。この考え方に気づけると投資に対する見方が大きく変わると思うのですが、株式投資は世のため人のためにもなるのであって、決して自分一人が利益を享受するためにするものではありません。自分が利益を得るためにやるんだとなると、結局ギャンブルになってしまうんです。

企業は事業を行うために出資を募り、出資をしてくれた人に自社の株式を渡します。そしてそのお金を元手に企業は毎期営業活動を行って純利益を生み出しますが、そのうち何割かを株主にお礼として還元します、これが配当金です。配当を受け取った株主はそれを欲しいものを買ったり、旅行をしたり、大切な人たちのために使ったりします。そのお金はまた別の企業の利益になり、そして株主に還元されます。つまり企業と株主がお金を流れを作り、それが上手く流れることで社会全体にお金は巡っていきます。これが、会社の給料しか稼ぎがないとなると、生活するだけでやっと、ということになってしまいます。これはマルクスの資本主義的に言えば、会社の給料というのは、従業員が仕事をしてくれるのに十分なお金だけだからです。

株式を保有すれば、毎年一定の給料とは別のお金が入ってくるので、生活にも余裕が持てます。だからこそお金を使うことができるわけです。これまでの日本はこの配当の部分が全くない人が多く、仕事からの収入しかないため、どうしても先行きを懸念してお金を溜め込んでしまう流れでした。要するに、株式投資とは、自分の利益であり、社会の利益のために行うもの、ということです。

ただ、この社会全体を踏まえた考え方が全く浸透しておらず、投資は老後資金を作るためなどとして、あえて将来の不安を煽り、証券会社や銀行は自分たちの利益のために金融商品を売り込むわけです。これではどうしたって正しい投資の考え方は身につきません。投資禅は何故、株式を保有するのか、何故、長期保有でなければいけないのかを今後も発信し続けていき、投資は自分だけでなく、社会を良くするためのものでもあることを伝えて行きます。これらの話は最終章でもう少し詳しくお話ししたいと思います。改めて言いますが、投資の利益は企業の純利益から支払われます。なので前提として半年や1年株式を保有したくらいでは目に見えた利益を得られません。経営には波があり、良い時もあれば悪い時もあります。株価が業績に反映されるのには時間を要することもあります。だからこそ、長い目で見て株式を保有することが大事なんです。でも待っているだけじゃ辛いと思います。ですから高配当株に投資して、定期的に自動でお金が入ってくるようにするのを推奨している、というわけです。

さて、これまで株式投資を長期で行うためのお話をしてきました。ここからはじゃあどんな企業を選べば良いのか、について詳しく説明して行きたいと思います。長期で保有すると言っても、その企業がしっかり利益成長していくことが大前提ですので、間違った銘柄を長期で持っても期待した効果は得られないかもしれません。1回読んだだけでは理解しきれないかもしれませんので、まずは一度通して読んでいただき、その後改めてわからない部分を読み返していただくことをお勧めします。

第1章 銘柄選択の基本前提

 投資禅では約200社の高配当株を監視対象として値動きや業績を追っていますが、今回のレポートではその中でも 中長期投資におすすめしやすい銘柄をピックアップして、なぜその銘柄なのかを解説していきます。ただ個別具体的な企業分析の話に入る前に、今後皆様がご自身で銘柄選定を行う際にお役に立てるだろう、銘柄を選ぶ際の基準で最も重要とされる要素をまずご説明しておきたいと思います。率直に言えば、この要素を最低限押さえておけば中長期投資で失敗する可能性はかなり抑えられると思います。

別の例で言えば、無名のメーカーが作った革の財布と、ルイヴィトンの革の財布、どちらも同じ牛革から作った財布であるというのは同じなのに、多くの人が選ぶのはルイヴィトンだと思います。これはルイヴィトンというネームブランドによるものであり、ルイヴィトンの財布なら品質も間違いなだろうという安心感です。同じ材料から作っても、そこに付加価値が加われば価格を引き上げられるということです。もちろん、そのための品質の良さは必要ですが、価格に上乗せできる分利益率が良くなるので、企業は利益を出しやすくなります。

ここで少し損益計算書のお話をしてみたいと思います。まずはこちらの図をご覧ください。

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引用:doda https://doda.jp/companyinfo/contents/finance/005.html

売上高という言葉はよく耳にするものだと思います。商品を販売した際にもらうお金のことです。ただその商品を作るためにはいろいろな費用がかかってきます。その一つが売上原価です。売れた商品の仕入れや製造にかかった費用のことで、これはあらかじめマイナスになっているわけなので、売上高から差し引かないと正しい収入が計算できません。そして、売上高から売上原価を差し引いたものが、売上総利益、よく粗利と言われるものです。この粗利を高めるためには、いかに販売価格を高くできるか、というところになるわけですが、それが付加価値ということになります。

そして先ほどから利益率といっているのは、正確には売上高営業利益率のことを指しています。営業利益というのは、先ほどの売上高から売上原価を引いた粗利に、販売費及び一般管理費を差し引いた残りのことを言います。販管費とよく省略されますが、販売費及び一般管理費というのは販売手数料や広告宣伝費などがある販売費と、人件費や減価償却費、租税公課や交通費などの一

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引用:doda https://doda.jp/companyinfo/contents/finance/005.html

般管理費を指します。要するに商品を販売するためにかかった費用を全て差し引いて残ったものが営業利益となります。

そして、売上高から営業利益を割り算して算出するのが売上高営業利益率です。

売上高営業利益率(%)=営業利益 ÷ 売上高 × 100

つまり、売上高のうちどれくらいの割合が営業利益になったかを見るための指標です。この数字が高いということは、それだけ価格競争力が強い、つまり値段が高くても買われているということであり、あるいは無駄な費用をかけずに商品を販売できているということにもなります。効率的に利益を稼げているということです。なので、沢山の個数を販売しなくてもそれなりの利益を稼ぐことができます。これが低いと、より多くの商品を販売しないと利益が追いつかないわけですから、どちらがお金を生み出す力があるか、もうお分かりだと思います。

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引用:マネーフォワード https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/44779/

そして、高級・高品質・高付加価値な商品やサービスを提供する企業は大体において利益率が高いということです。なので銘柄選定をするときには、こういった利益率がどうなっているかを確認するのも良い手段だと思います。ただ、優良企業の全てが利益率が高いというわけではありませんので、画一的に利益率が低いから投資対象にしない、というのはよくありません。この点はご留意願います。

そしてもう一つ、株式投資で最も大事だと言える投資の考え方について、これだけは心に留めておいていただきたいことをお話しします。それが株式投資の利益の源泉は企業の当期純利益から支払われる、ということです。あまりに重要なことなので強調しておきます。これが株式投資の正しい見方であり、ここを理解できていないと中長期投資はうまくいきません。大半の方は、株式投資の利益は「安く買って高く売る」ことだと考えています。勿論、これも間違いではありません。ですが「決算で予想外に良い業績が出て株価が上昇したので利益が出た」「その企業にとって将来の業績がプラスに働く法律改正があったことで、今後の業績見通しが良くなる期待で株価が買われて株価が上がった」等によって評価益が出た場合というのは、その評価益は誰かの損失が源泉になってるんです。

株式投資の世界では、短期のトレードなどはゼロサムゲーム(利益と損失の総和が0になるゲームのこと)です。トレーダーたちがお金を市場に投じて上がるか下がるかのゲームをしているわけで、いわばトレーダー同士のお金の奪い合いです。買ったトレーダーが負けたトレーダーの資金をもらっていくので、全員が投じたお金が総額が誰かの元に流れていくだけで、新たにお金が生み出されるわけではありません。株式市場の参加者は意識的、無意識的に関わらずこのゼロサムゲームに参加しているわけです。だから利益が出たときに儲けたという言葉を使います。儲けるの意味を辞書で調べると金銭上の利益を得る、また思いがけない得をすると出ています。

株で儲けるという考え方が染み付いてしまっていると、なかなかこの考え方が難しいかもしれませんが、本来、株価が上がるのは企業が利益成長をしていくことで企業としての価値が高まるからであり、それは業績が伸びていくとか、自社株買いをして一株あたりの価値を高めるからこそ実現するものです。そして配当金という定期的に直接株主に支払うことで還元する方法があります。自社の株を買うのも、事業投資をして将来の利益を拡大させるのも、直接株主に配当金で還元するのも、全ては企業が営利活動で稼いだ純利益から賄っています。

なので投資家が気にしなければいけないのは、明日の株価がどうなるかではありません。企業はどうやって事業を展開して、今後どれくらいの利益を目指していて、そのためにどういった活動をしているのかということです。所詮短期的な株価の変動はトレーダーやヘッジファンドなどがお金の奪い合いをしているだけであって、それを気にする理由は中長期投資家にはありません。逆にこの部分に気付けないと、中長期投資は難しいと言わざるを得ません。日々の値動きに一喜一憂し、急落すれば不安になって投げ売りして結果損をして終わってしまうからです。

但し、中長期投資家が彼らトレーダーたちの短期売買で気にする時が一つあります。それは経済指標だったり政治家の発言だったりなどで株価が急落した時に、その企業の株価が本来の価格と考えられる水準よりも安くなった時です。中長期投資家はこの時に嬉々として市場に参加します。

なぜならこれまで以上にお安く株式をお買い求めできるからです。安く買えば、それだけ投資資金を抑えられ、その上で貰える配当金を増やすことができます。それに安く買っているのでそれ以上下がる可能性も低く、株価が戻ればそれだけで評価益が出ます。

不思議な話なのですが、多くの個人投資家の方は、上がっている株を買おうとします。巷ではAI が今後の世界をリードする、とか。半導体関連が人気だからこの波に乗ろう、とか、インドが絶好調だ、とかのトレンドがあると、それらの銘柄を買おうとします。人気化しているということは、それだけ多くの人がすでに買っているので株価はそれなりに上がってしまっているわけですが、にも関わらずそういった銘柄を買って、結局は高値掴みになってしまったりします。

どうしてかというと、自分の株価が大して上がっていないのに、別の投資家はそういった人気の銘柄を保有していることでどんどん評価益が出ているので、羨ましくなってしまうのと同時に置いてかれたくないという気持ちが働いて、自分もその波に乗りたいと思うからです。だから乗り遅れまいと焦って買ってしまうのです。ただその時にはもう割高になっている可能性が高く、過熱感のある銘柄の株価はいずれ下落していくのが市場の原理です。

安い時に買うというのは重要です。これは中長期投資であろうとトレードであろうと同じです。ただトレーダーはすぐに売却してしまいますが、中長期投資はそれなりの期間その企業と付き合っていくことになります。投資している企業がどんな活動をしていて、どうやって利益を生み出し、それをどう私たちに還元してくれるのか。将来のビジョンはどんな計画で、そのための進捗はどうなっているのか、これが理解できていれば、株価の変動があったとしてもそこまで不安になりません、何故ならその企業について理解できているからです。市場がどんな売買をしていようと、企業がしっかりと利益を稼いでいるのだと分かれば、その利益が自分たちの利益になるわけですから、狼狽える理由がないのです。だからこそ、企業分析は重要なんです。

第2章 個別分析

それではこのレポートの本題でもある、投資禅が中長期で保有するのに適していると思われる銘柄をピックアップして、何故そう思えるかをご説明して行きましょう。彼らがどんな事業をしてどれくらい利益を稼ぎ、また今後稼いで行こうとしているのか、そしてどれくらいを還元してくれるのかを知ることで、皆様の株式投資は格段にレベルアップするのは間違いありません。

銘柄①:ヒューリック(銘柄コード:3003)

まず取り上げるのはヒューリックです。事業はどんなことをやっているのかというと、メインは不動産事業で、賃貸や管理、開発などを行い収益を生み出しています。ただ不動産の売却益が比率としては大きくなっています。なので不動産の賃貸や管理、開発をしながら適宜売却をこなし大きく利益を作り出す構造なのが分かります。また保険の代理店やホテル・旅館も経営しています。

ヒューリックという会社は不動産、保険、ホテルや旅館で収益を稼ぐ企業なのがわかります。高級旅館のふふは知名度も高く、不動産の賃貸収入はオフィスからホテル、商業施設など分散されています。全保有物件の空室率はなんと0.3%という低さです。

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引用:ヒューリック https://www.hulic.co.jp/ir/library/

そしてヒューリックは2008年に上場して以来、常に増益を続けてきました。年々配当性向を少しずつ高めていることもありますが、これによって上場以来15期連続(2024年現在)で増配がされているという企業です。増益により増配ができているという非常に健全な増配の形ですが、この15 年間には景気の変動もいろいろあるはずですが、どうしてこんな業績が可能になっているのか、不思議に思いませんか?

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引用:ヒューリック https://www.hulic.co.jp/ir/library/

ヒューリックは賃貸事業を中心に安定した収益を生み出しているわけですが、その賃貸物件の大半は東京の駅近エリアにあります。人口減少時代の今も東京は人口が増え続けており、駅から近いというのはそれだけで高い価値を有します。なので地方にオフィスを持つことはありません。また規模も中規模にすることで空室率を抑制させています。敢えて大規模な開発はせず、分譲マンションではなく高齢者施設やホテルなどに分野を絞ることで、安定した利益が入ってくるようにしているわけです。

また賃貸物件は古い物件は建替えを行い床面積を広げることでテナントをより多く入れられるようにしています。バリューアッドは物件の持ちうる価値を最大限に引き出すためのリニューアルやイノベーション、コンバージョンなど多様な手法で資産価値を最大化した後で販売します。また物流施設やデータセンター、研究施設などのアセット開発も行っており、今後必要とされる物件にも注力しています。このように、好立地な物件で安定した収益を生み出しつつ、適宜開発や建て替え、売却を繰り返すことで継続した増益を達成できているわけです。

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引用:ヒューリック https://www.hulic.co.jp/ir/library/

ヒューリックが増益をし続けていくためには保有物件の定期的な開発や建替、バリューアッドが必要になるわけですが、じゃあその進捗はどうなっているのか、というのがこの図です。現行の中期経営計画期間中に100件の案件を作り出すのが目標となっており、うち94件は2024年7月時点で確定しているということです。ヒューリックは現状の事業がどうなっているかについて割と細かく毎四半期の決算で解説してくれるので投資家にフレンドリーではあると思われます。口先や文章だけで経営計画を説明する企業もあるものの、具体的な進捗は非開示にされることも多いのですが、同社はこういうことをやっているとしっかり説明しているのが好印象です。

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引用:ヒューリック https://www.hulic.co.jp/ir/library/

高配当株は、配当金が多いわけですが、そうするとどうしても事業投資に回す資金が少なくなってしまいます。例えば配当性向75%だとすると、年間で稼いだ純利益の4分の3は株主に還元してしまい、残りが少なくなってしまいます。内部留保も考えると自由に使えるお金はそれほど残りません。そうなると、どうしても限られた資源だけで事業を行うことになるので利益が成長していかないことが多いわけです。

高配当株だけどなんだか株価が思ったより上がらないなあ、なんて考えてしまう銘柄は、そもそも業績が年々増益していってないことが多いです。配当金は多いけど株価は上がっていかない銘柄では投資妙味も弱いです。なので株主還元はしっかり出すけど、事業投資もしっかりしているという企業を選ばなければいけません。決算説明資料や統合報告書、中期経営計画などには今後どうやって事業利益を生み出していくかが書かれているはずなので、ここをよく見てください。ちゃんとした企業であれば企業の将来のビジョンを持っているのでこれからどうやってより稼いでいくかが記されています。逆にそういった部分が見えない企業は経営陣の真剣みが足りないかもしれないので、要注意と言えます。

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引用:ヒューリック https://www.hulic.co.jp/ir/library/

最後にヒューリックの営業利益率はどれくらいなのかを確認してみましょう。

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 引用:IR BANK https://irbank.net/E00523/results

全体的に20%以上となっているようです。一般論としては、営業利益率は業種にもよりますが

10%以上あれば優秀だとされています。20%以上を超える企業はそう多くありませんので、そういった意味ではヒューリックはかなりのパフォーマンスだといえます。あまりにも高いと従業員に強い負荷がかかっているかもしれないという懸念もありますが、同社の場合、物件の圧倒的な競争力による恩恵も多分に影響していると考えられます。高級、高付加価値をもつ物件を中心に取り扱うヒューリックは今後とも継続した利益成長を期待しやすい企業と思われます。

銘柄②:日本製鉄(銘柄コード:5401)

次に取り上げるのは日本製鉄です。日本製鉄は粗鋼生産量が国内第1位の最大手鉄鋼メーカーのわけですが、同社の業績はしばらくずっと低迷していました。そういった意味では、しばらく前の日本製鉄であれば中長期で保有を推奨できるような銘柄では決してなかったといえます。鉄鋼業は景気の影響を受けやすいという、所謂「景気敏感株(シクリカル)」の1つです。なので景気のサイクルによって業績は変動してしまいやすいという特徴があります。

2014年度から2018年度は低調な当期利益とROEの推移でしたが、2019年度には米中貿易摩擦による景気の減速傾向があったところに新型コロナウイルスの感染拡大が拍車をかけて需要が減少、にも関わらず中国では高水準の鉄鋼生産が継続したことで鉄鉱石などの主原料価格は高止まりして原料市況高・鋼材市況安という過去に例を見ない状況となったこともあり赤字に転落、2020年度も引き続き影響を受けて赤字を回復できませんでした。

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24年度第一四半期決算資料より引用:https://www.nipponsteel.com/ir/library/ settlement.html

停滞する日本製鉄の事業構造は根本から変えないといけないと考えた、2019年に新しく社長になった橋本英二氏の主導により徹底した構造改革が実施されました。この構造改革の中身は大別して3つ、注文構成高度化と紐付きマージンの改善、生産設備構造対策です。

注文構成高度化というのは、書かれている通りですが付加価値の高い商品の比率を高めて、汎用品の比率を低下させるというものです。汎用品というのは分かりやすく言えばどのメーカーでも作れるような商品のことです。そのため価格競争に陥りやすく、利益率が低下しやすい傾向にあります。一方で高付加価値商品はその会社でなければ作れないような高度な技術で作られた商品のため、生産数が限られたりコストがかかったりしますが、それだけに高く売れるため利益率が上昇しやすくなります。

紐付きマージン改善は、鉄鋼メーカーが事業者との価格交渉において、取引先との関係性を維持するために余計な値引きなどはせず、市場価格に沿って、労務費や物流費なども考慮した価格で取引をしてもらうための価格交渉を積極的に行うことで安売りをしないようにした、ということです。

生産設備構造対策は汎用品など対して利益が出ていないにも関わらず動かしている高炉を5基減らすことにより生産能力を20%縮小させてコスト低下を測るものです。これと注文構成を見直して、コストを下げつつ利益を見込める商品に集中するという事業構造に変えていったということです。

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24年度第一四半期決算資料より引用:https://www.nipponsteel.com/ir/library/ settlement.html

商品構成、価格交渉、コスト削減を徹底して行っていくことで、限界利益の単価は大幅に改善して、2019年比で40%下がったということです。ちなみに限界利益というのは売上高から変動費を差し引いたもののことです。固定費というのは売上の増減に比例せず常に一定度発生する費用のことですが、変動費は売上の増減によって変動する費用です。例えば商品を仕入れて販売して売上が増加した場合、商品を仕入れるための費用も増加しているわけですから、この仕入れの費用は変動費、ということになります。

そして売上高と固定費と変動費を合わせた総費用が交わるポイントが損益分岐点、つまり黒字と赤字の境界線ということです。ここでは別段覚えなければいけないものではないですが、参考に計算式を載せておきます。

損益分岐点=固定費÷{1ー(変動費÷売上高)}

要するに、構造改革を積極的に進めたことで日本製鐵は2019年度よりも2023年度は40%利益が出やすくなったということです。4割も損益分岐点が下がれば、それだけ黒字になりやすいわけですから、2019年度以前と2023年度以降では日本製鉄は大きく変わったのだとお分かりになると思います。2023年度、2024年度は減益となっていますが、それでもそれなりの利益を稼げているのはこの構造改革による効果が寄与しているためです。

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24年度第一四半期決算資料より引用:https://www.nipponsteel.com/ir/library/ settlement.html

年々需要が減少する国内の鋼材需要に対応するために日本製鐵は海外の事業拡大を推進しています。国内では高炉を廃止して生産量を縮小している一方で、海外では生産量を拡大しています。とりわけ同社が積極的に投資しているのがインドと米国です。

また原料事業においてもこれまでの調達するだけだった原料炭に対し、炭鉱に直接投資をして保有することでより安定した原料調達ができるようにしたり、日鉄物産とうまく連携して製品の流通を進めるなど、明確な厚みを持って事業を展開できるようにしています。

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24年度第一四半期決算資料より引用:https://www.nipponsteel.com/ir/library/ settlement.html

各事業をしっかり行っていくことで、外部環境がどんな状態であろうと実力ベースの事業利益を1 兆円稼げる構造体質に持っていく経営計画です。これが実現できれば景気敏感株でありながらも相応の業績を残すことができるため、安定して投資ができる企業に成長していくことが期待されます。その上で配当利回りも高い高配当株ですから、まさに長期で保有し続けて利益を享受するに相応しい銘柄と言えます。

このように、その企業がどういった事業構造で利益を出していき、今後それはどのように成長していくとしているのかを理解できていれば、株価が下がったところで収益構造と利益を稼ぐ力が変わっていないのであれば、過度に不安になる必要なんてないわけです。

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24年度第一四半期決算資料より引用:https://www.nipponsteel.com/ir/library/ settlement.html

銘柄③:東京海上ホールディングス(銘柄コード:8766)

長期で保有するとなれば、やはり損害保険事業者はポートフォリオに入れておきたい業種です。日本ではメガ損保と評して他にもMS&ADとSOMPOホールディングスが最大手として存在していますが、その中でも最も規模が大きい東京海上ホールディングスがおすすめとなります。災害などが発生すればどれくらいの損失になるかは予測しづらいですが、規模の大きい同社はそれだけ量の部分でカバーしやすいというメリットがあります。

まずそもそも何故、損害保険会社がおすすめなのかという点ですが、シンプルにいってしまえばいかなる市況によっても需要が消えることはないビジネスだからです。保険というのは人間の根本にある不安を扱っている事業ですから、この世から生活で発生する様々な不安が消えてなくならない限りは需要は常にあると言えます。特に生命保険ではなく損害保険であることが重要です。

どうして生命保険ではなく損害保険なのか、ということですが、需要の違いが最たる理由です。例えば生命保険というと、代表的なものは死亡保険ですが、そもそも死亡保険というのは、被保険者に万が一があった際にまとまったお金が遺族に支払われるというものですが、これは商品の特性上、働き盛りの相対的に若い世代が必要とする保険です。子供の教育費や住宅費など、支払いが多くまとまったお金がなかなか貯められないような世代にとって、その稼ぎ頭に万が一があって仕舞えば家族は途端に収入を失い路頭に迷うかもしれません。そういった家庭には死亡保険は必要です。ただ60代、70代で子供は独立し、夫婦二人で生活していて、貯金もある程度溜まっているという場合、死亡保険に入る意味はあまりありません。

医療保険も怪我や病気をした際に支払われる保険ですが、これは立ち位置としては国の保険でカバーできない分を補填する役割が大きいです。入院した際の食事代や部屋代などは保険ではカバーできないので、そういった入院、通院、手術などにかかる費用を捻出できない人にとっては契約すべき保険といえますが、これも言い換えればそれなりに預貯金があって、怪我や入院をしても国の医療制度と貯めたお金でカバーできるという人は契約する必要がないわけです。

ですが、損害保険の対象となるものは、預貯金でなんとかできないケースが多いです。例えば代表的な自動車事故に関しては、相手の車をぶつけて破損させた場合、一般の乗用車でも部位によりますが数十万円かかることもあります。高級車だと目も当てられません。対象が物ならまだしも、人を轢いてしまったりするとそれこそ膨大な治療費がかかるかもしれません。こういったものを預貯金だけでカバーするのは大変です。

さらに火災保険などの対象物は住宅などですから、万が一火災で自宅が焼失してしまったとしたら、その損失額は甚大な額になります。これを預貯金でカバーできるのは相応に富裕層な方でないと難しいのではないかと思います。このように、生命保険であればそれなりに預貯金があれば加入しなくても大丈夫なケースは多いものの、損害保険は加入しなければ日々の生活どころか人生まで危うくするほどの損害が発生する可能性のある対象なので、加入せざるを得ず、そしてその需要はいつまで経っても変わることはありません。

東京海上は兼ねてよりリスク分散として国内損害保険、資産運用、国内生命保険、海外事業と比較的バランスよくリスクを分散するようにしています。人口が減少していき、総体的な需要が減少していく日本国内と違い、海外では需要は増え続けているわけで、そこに対応することで世界の損害保険事業者の中でも高い成長率を実現してきています。

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東京海上グループの経営戦略 引用:https://www.tokiomarinehd.com/ir/

東京海上の海外事業者はボルトオンM&Aを繰り返して成長しています。ボルトオンM&Aというのは既存の大企業が戦略的な目的で比較的小規模な企業を買収することを言います。こういった買収は既存事業に新しい製品ラインや顧客、地理的なメリットなどを追加することを目的としています。製薬会社などもよくやる手ですが、一から事業を起こすよりもすでにある程度出来上がっているものを買い取った方がコストが余計なコストを省けますし、いきなり利益を出すことができます。

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東京海上グループの経営戦略 引用:https://www.tokiomarinehd.com/ir/

また、メガ損保各社は政策保有株式の速やかな縮小を計画しています。東京海上ホールディングスは23年度末には時価約3.5兆円であった政策保有株式を3年で半減させ、2029年度末にはゼロにする計画です。売却した利益の一部は株主に還元されることになりますので、2029年度までは本来の事業以外からの利益が加算されるということは、それだけ株主還元が強化される期待ができるということです。

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東京海上グループの経営戦略 引用:https://www.tokiomarinehd.com/ir/

政策保有株式というのは、いわゆる持ち合い株のことで、日本企業は昔から取引先の株式を保有しあうことで敵対的買収に備えたり、両企業の関係を良好に保つようにしていました。しかしグローバル化が進んだ現在では、そういった政策保有株式は経営上はもはや効率的な資産の活用方法ではなく、また投資家からすれば何の価値も無い無駄なものです。投資家が意識する指標にROEというものがあります。これは自己資本利益率のことで、投資家が投下した資本に対し、企業がどれだけの利益を上げているのかを示す財務指標です。ROEが高い方が経営効率が良いわけです。

ROE=当期純利益÷自己資本×100 又は ROE=EPS÷BPS×100

この計算式を見るとわかりますが、ROEを高めるためには当期純利益を増やすこと、自己資本を減らすこと、及びその両方が必要になります。なので何ら利益や資産価値を生まない、ただ取引先との関係を維持するためにだけに保有している政策保有株式はROEを低下させるだけなので、死に金のような扱いです。必要ない資本は株主に返却するか投資に回して欲しいというのが投資家の考えです。日本企業が海外投資家に買われるためには、こういった非生産性の政策保有株式を売却して経営効率を高める必要があります。東京海上はこれを可及的速やかに減らそうとしているわけです。

そして東京海上ホールディングスは高配当株でもあります。EPSを成長させて、それに合わせて配当金も引き上げていくというのが基本的な配当方針で、現在は修正後純利益の過去5年平均に対して50%が配当金とする、としています。競合他社のMS&ADやSOMPOホールディングスは単年度を基準にしているのに対し、こちらは平均での計算という違いがあります。長期的に配当金は増配を続けており、2024年度時点では13期連続で増配しています。

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東京海上グループの経営戦略 引用:https://www.tokiomarinehd.com/ir/

そして東京海上ホールディングスは新しいKPI(重要業績評価指標)を発表しています。これによると、2023年度と比べて2024~2026年度までの3年間は年平均成長率7%以上を目指すとしています。実際はそこに本業とは関係ない利益である政策保有株式の売却益が入ってくるわけですが、これを考慮すると15%以上ということなので、同社がしっかりとKPIにコミットしてくれれば、今後も安定した利益成長を期待できることになります。

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東京海上グループの経営戦略 引用:https://www.tokiomarinehd.com/ir/

損害保険会社はただ保険料収入だけが収益ではなく、集めた保険料の中ですぐに使用されないとされる分は資産運用を行なって利益を出すというビジネスを行なっています。基本的に資産と負債のバランスを意識しながら長期・安定的なな収益を確保する投資を行います。投資対象のうち6 割は債券で、格付けもA以上が80%以上です。

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東京海上グループの経営戦略 引用:https://www.tokiomarinehd.com/ir/

資産運用は主に海外事業者のデルフォイという会社が運用を受託して行なっていますが、地方債やローン、証券化商品というのは特殊な債券などのことなのですが、いずれにしても複数の資産を活用してマーケットの平均よりも高いリターンを出してきているということです。こういった高利回り、かつ安定的な資産運用を行いつつ、世界的に保険料収入を拡大させていることが、同社の持続的な利益成長を支えているわけです。

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東京海上グループの経営戦略 引用:https://www.tokiomarinehd.com/ir/

つまり東京海上ホールディングスは、将来の不安という人間が誰しも抱く心理的感情をビジネスの対象として、幅広い種類の不安をカバーするための保険料を定期的に収入とし、集めた保険料の一部を運用して安定して利益を増やします。またハイブリッド資本(資本と負債の特徴を併せ持つ証券)を活用することで、資本性が認められつつも株式ではないので株式の希薄化がされず、これにより投資家の価値を損なわずに買収を行い更なる成長を成し遂げていくというわけです。

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東京海上グループの経営戦略 引用:https://www.tokiomarinehd.com/ir/

保険会社の最終的な純利益は、その年度によって変わります。それは災害などが起きれば保険金の支払いが必要になりますので、年度ごとの純利益がどれくらいになるかは災害の規模などによってきてしまいます。多くの方は単年度の災害による保険金支払いで保険会社の損益が減益した、増益した、という表面的なものしか見ない傾向にありますが、そもそもの稼ぐ保険料収入が増収をし続けていくのであれば、長期的には優良な投資先になるということを意識するべきだと思います。

銘柄④:SBIホールディングス

続いてご案内するのはSBIホールディングスです。ご存じネット証券最大手のSBI証券や元日本長期信用銀行である新生銀行、日本最大のベンチャーキャピタルであるSBIインベストメントなどを中心とした、証券、銀行、保険、ノンバンク、資産運用、ベンチャーキャピタル、暗号資産、ヘルスケアなど幅広く手掛けており、最近では政府から一定以上の補助金を受領することを前提に宮城県に半導体ファウンドリを建築する予定など半導体関連にも参入する計画です。

設立は1999年7月、元々はソフトバンクグループの金融関連企業として生まれましたが、ハイリスクを取り続けるソフトバンクにとって安定した財務を求められる金融事業を並行して行うことは困難だったことから2006年8月にグループを脱退、独立しました。なので名称は本来

SoftBank Investmentの略だったのですが、Strategic Business Innovatorの略に変更したという経緯があります。比較的若い企業ではありますが、時価総額は地銀首位級のコンコルディアフィナンシャルグループや千葉銀行などとほぼ同等です。

SBIと聞くと、誰しもがまず思い浮かべるのはSBI証券ではないかと思います。なのでSBIグループと聞くと証券業のイメージが強いと思いますが、実は現在において連結業績に対する寄与度という観点では銀行業の方が圧倒的に上回っているのです。そういった意味では、SBIホールディングスの主力事業は何かと言われれば、銀行業と言えるのではないかと思います。

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SBIホールディングス24年度第一四半期決算より 引用:https://www.sbigroup.co.jp/ investors/disclosure/sbiholdings/

新生銀行は公的資金の返済が全く進まず、国も手を焼いていたわけですが、ここに名乗りをあげたのがSBIホールディングスです。いわゆる敵対的買収になり、当時の新生銀行の経営陣は何とかして買収を回避しようとホワイトナイトを探し回ったわけですが、結局のところ誰も現れなかった為買収されました。しかし当時の預金残高は6.5兆円だったのが、24年第一四半期には11.7兆円まで拡大、口座数も53万口座増加し、SBIグループに参入した効果は間違いなくあったと言えます。

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SBIホールディングス24年度第一四半期決算より 引用:https://www.sbigroup.co.jp/ investors/disclosure/sbiholdings/

新生銀行は複数の子会社を持っていたわけですが、それらもそっくりそのままSBIホールディングスの一員となったことになります。SBIはこれまで銀行というと三井住友信託銀行と共同出資して設立した住信SBIネット銀行のみでした。この銀行は法人融資はせず、個人ローンだけでしたが、新生銀行がグループ入りしたことで法人への融資も取り込めるようになっています。またアプラスでクレジットカード事業などおおよそ銀行業としてフルラインナップのビジネスができるようになりました。

結果的にはSBIホールディングスに買収されたことでグループでのシナジーが活性化され、預金残高も営業資産残高も年々増加し続けているわけなので、買収された効果はあったと言えます。このように、銀行の経営陣は生え抜きの気質を持った人間というよりも、上司へのゴマすりや数字の管理などができる人間が選ばれやすく、営業経験が少なかったり、取引先との関係をうまく築いてきた人間ではないことがあります。そんな人間が上に立つと、どうして顧客第一などできません。旧新生銀行のように自分たちの利益ばかりを優先すると、会社はダメになるという良い例かと思われます。

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SBIホールディングス24年度第一四半期決算より 引用:https://www.sbigroup.co.jp/ investors/disclosure/sbiholdings/

私がSBIホールディングスを長期保有に推奨する理由は、「損して得とれ」をしっかり理解できているからにあります。もちろん社長の北尾氏が先導しているため、社長が変わった際にどうなるのか、という点はありますが、企業としての方向性はそう大きくは変わらないのではないかと思います。ビジネスの世界では、自分たちの利益を優先する企業はいずれ腐っていってしまいます。

とりわけ私自身、金融業に身を置いていたため、金融機関というものがいかに自分たちの利益を優先しているかを知っているので、こういったことには敏感なんです。

ビジネスはwin-winが基本です。顧客のために仕事をして、そのお礼として収入を得る。これが原則です。人間関係だって同じです。まず与える、自分の損失を顧みず他者に与えることで、それが返ってくるから良好な関係を築けるわけです。人も企業も同じですし、ビジネスはそういった繋がりで強くなると思います。だからこそ、目先は損をしてでも顧客のためにメリットを提供することで、将来的な発展が見込めるのだと思っています。

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SBIホールディングス24年度第一四半期決算より 引用:https://www.sbigroup.co.jp/ investors/disclosure/sbiholdings/

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SBIホールディングス24年度第一四半期決算より 引用:https://www.sbigroup.co.jp/ investors/disclosure/sbiholdings/

深いところまでは話せませんが、私が銀行員だったころ、よくこんな光景を目にしました。それは、期末近くなってくると、融資量を増やすために取引先に対して短期間で良いからお金を借りてくれないかとお願いする、いわゆるお願いセールスです。銀行の決算において融資量の期末残高を良く見せるために、こうやって優良な取引先に対して融資を依頼するわけです。ですが当然のことながら、その取引先は、別段今すぐの融資は必要としておらず、資金需要はないわけですが、それでもお願いをするというのがよくある光景です。

これは一歩間違えると優越的地位の濫用になりかねない上に、顧客は短期間とはいえ利息の支払いが生まれるわけで、こんなものは何の意味もない取引と言えます。これこそ自分たちのことしか考えていない、どうしようもない仕事で、ビジネスでも何でもありません。またそういった営業をする方も、意味もない提案を顧客にしなければいけないという憂いはあるはずで、そんな感情すら感じなくなってしまうと、組織はまずい方へ進んでしまうわけです。

従業員個人レベルでの不祥事はSBIグループにもありましたし、他の優良な企業でもそういったことは起きてしまいます。流石に社長は部下一人一人を全員管理することは出来ませんから仕方がないですが、それでも組織の方向性として、こういった損して得とるという考えを実践できているかどうかという点を、皆様も今後の銘柄選定でお役に立ていただければと思います。

銘柄⑤:三菱UFJフィナンシャルグループ

長期保有という意味ではやはり今後10年以上にわたって社会から必要とされ続ける企業を選ぶ必要がると思いますが、そう言った意味ではやはりメガバンクは外せないと思います。金融というのは資本主義の中心的存在であり、信用創造により経済成長を促す重要な役割を持つのが銀行ですが、地方銀行と都市銀行ではアドバンテージが全く違ってきます。地方は東京から離れるほど人口減少による地域の衰退が問題になっています。

地方銀行というのはあくまでその地域に根差し、地域金融と経済成長を担う役割を持っています。ただこれは言い換えれば地域経済と一蓮托生ということでもあります。つまり、地域経済が衰退の一途を辿るとすれば、自ずと地方銀行も衰退せざるを得ません。なので地方銀行への投資を考える場合にはどうしても相応に地域経済の発展が見込める、つまり人口が相応にいるエリアに限定されてしまいます。

一方で都市銀行は東京を中心として全国に展開しています。とはいえ昨今はコスト削減といったこともあり収益性の低い支店の統廃合はされているものの、それでも日本の各重要地域には支店を置いているため、日本経済全体との一蓮托生となります。また地方銀行と違い海外での展開も行っているので、仮に日本全体の経済が衰退していったとしても、海外の経済成長の恩恵を取り込むことで成長することができるという点で考えると、やはり長期保有を考えた場合には地方銀行ではなく都市銀行、つまりメガバンクを対象とするのが良いかと思います。

三菱UFJフィナンシャルグループは日本のメガバンクとしては最大規模の金融グループです。三井住友でも三菱UFJでも投資パフォーマンスという意味では大差はないのではないかと思いますので個人的な好き嫌いで選んでも良いと思いますが、ここでは業界トップとして三菱UFJを取り上げたいと思います。同社は2024-2026年は成長をつかむ期間として、具体的には23年度は1.6兆円だった営業純益を、26年度には2.1兆円まで引き上げることを計画しています。

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2023年度決算投資家説明会 引用:https://www.mufg.jp/dam/ir/presentation/2023/pdf/ slides2403_ja.pdf

では三菱UFJはどうやって今後の成長を目指していくのか、というのがこちらで、商品とチャネルで4象限から7つの戦略を策定したということで、これらの戦略を通じて国内では金利ある世界での着実な収益化を、海外では強みを有する領域での更なるビジネス拡大を狙うということです。

ではより具体的にこれらがどういったものなのか、詳細を確認していきましょう。

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2023年度決算投資家説明会 引用:https://www.mufg.jp/dam/ir/presentation/2023/pdf/ slides2403_ja.pdf

まず①の国内リテール顧客基盤の強化というのは、個人顧客と信頼に基づいた長期的な取引関係を築き、ビジネス基盤を拡大すること、としています。銀行では個人顧客のことをリテールと言います。狙いはウェルスマネジメントを除く個人顧客の取引全般です。ウェルスマネジメントについてはこのあと出てきます。ライフタイムバリューというのは顧客が自社の利用を開始してから終了するまでの期間に、どれだけの利益を得ることができるか、ということです。この最大化を目指し、収益を獲得していくとしています。

私も三菱UFJ銀行の口座を保有していますが、正直なところユーザーインターフェイスはもうちょっと頑張って欲しいところで、やはり生粋のネット銀行などと比べると一つの画面に色々なものが詰め込まれていて見づらかったり、どこに何があるのか感覚的に把握しづらいのがまだ発展途上という印象があります。これについては競合を参考にしていただきたいですね。またオンライン証券も三菱UFJモルガン・スタンレー証券とauカブコム証券の2つが設定されており、これもどっちを推していきたいのかはっきりしてほしい感じがします。

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②は法人×WMビジネス強化ということで、これは事業・資産承継にかかる課題解決力の強化と顧客接点の拡充により更なる収益拡大を狙う戦略ということです。法人の代表やその家族も含めて、資産の承継、運用・相続など諸々の解決を提案する営業です。これは特段三菱UFJが独自でok なっているわけではなく、おそらくどこの銀行も行っている営業活動といえます。私も銀行員時代にこんな法人オーナーや会長などの資産継承についての営業提案を行ったことがあります。

銀行は手数料ビジネスなので、その手数料は資産の額に対して一定の料率で決められます。取引というのはどの業界でも同じだと思いますが、取引金額が大口になるほど手数料がたくさん入ってきます。なので小口取引ももちろん大事ではありますが、業績目標を達成するためには相応に大口取引が必要になってきます。銀行にとってそれは法人のオーナーが最も資産を持っていることが多いため、こういったビジネスを推進していく必要があるわけです。

メガバンクくらいになれば提案する商品は数多くラインナップされているのでしょうが、地方銀行だとなかなかそうはいかないことが多いです。なので個人的には地方銀行からこういった提案を受ける際には、どういった商品を勧めてくるのか、その商品は本当に顧客第一に考えられて提案しているのかをよく判断するようにしていただければと思います。

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③はGCIB・市場一体ビジネスモデルの進化で、GCIBのCIBはコーポレート&インベストメント・バンキングの略です。Gはグローバルのことなので、つまり国際的な法人と投資、金融サービスのことです。主にアジアの出資先銀行を通じて現地の中小企業や個人顧客向けに金融サービスをすることを指します。ここに証券会社を絡ませて収益を稼ぐ戦略というわけです。銀行や証券の世界では、この2社が共同でビジネスを行うことを銀証連携と言います。

銀証連携自体は国内でも多くの銀行が行っているビジネスモデルです。もともと関連会社に証券会社を有している銀行もあれば、証券会社と連携して共同出資で証券会社を設立したり、地場証券を買収して子会社化するところもあります。銀行で扱える証券の商品はせいぜい投資信託と個人向け国債くらいです。現在は多種多様な商品が販売されており、また株式投資の需要も高まっています。こういった時、銀行は単体ではそのニーズを満たせないので顧客が離れていってしまうことにも繋がりかねないため、また証券側も銀行の優良顧客を自社に取り込みたいという狙いもあり、こうった連携ビジネスが成り立ちます。

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④はアジアプラットフォームの強靭化です。既存ビジネスを強化するのは当然ですが、将来に亘ってアジアの成長を取り込むための投資は、三菱UFJにせよ三井住友にせよ積極的に行っています。

多くの先進国が成長率が安定的になってきてしまっている中で、次に成長性の強さが期待できるのが東南アジアなどで、インドネシアは世界的にも人口が多く、それでいて新興国なので経済成長の余地が大きいなど、アジアの成長を取り込む動きが活発化しています。

アジアではデジタル金融により成長の取り込みを図っています。下図は法人向け、個人向け、スタートアップ企業への同社が提供している金融事業です。今の時代は新興国とはいえスマートフォンは行き渡っているのでどこもかしこもオンライン化が進んでいます。日本の銀行がアジアでの基盤を築ければ、それだけ将来に亘って安定した収益の確保が期待できるわけで、非常に重要な事業といえます。

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さらに下図はインドに対する取り組みです。これまでも人員規模を拡大して業務受託領域を拡大させてきていましたが、今後はさらに人員を増強して業務領域と対象国を拡大し、業務の標準化を進めて加速度的な効率化を目指すとしています。ちなみにKYCというのはKnow Your Customerの略で顧客の本人確認業務手続のことです。

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⑤は資産運用立国実現への貢献ということで、グローバル総合金融グループとして資産運用・管理・販売・コンサルティングなど多岐にわたる機能の顧客への提供を通じて資産運用立国の実現に貢献する、というものです。こういった各種金融サービスの包括的な提供というのは多くお大手金融グループが行っていることではありますが、とりわけ関連会社の三菱UFJアセットマネジメントは最も人気なインデックスファンド「eMAXIS」シリーズを取り扱っています。

ただグループでの連携がまだ完全に上手くはいっていない印象があるので、三菱UFJほどの巨大グループが連携をしっかりするようになれば、相応のサービスを提供できるのではないかという期待は持てると思います。ここはSBIホールディングス同様、顧客第一のビジネスができるかどうかにかかってくると思われます。

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⑥はGX起点でのバリューチェーン支援です。GXというのはグリーントランスフォーメーションの略で、化石エエネルギー中心の社会構造をクリーンエネルギー中心の構造に転換していくことを言います。GXについてはあらゆる企業が目指さなくてはいけない義務でもありますので、こういった環境問題を収益化に繋げていきますということが説明されています。

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地方銀行などはどうしてもこれまでやっていたビジネスだけで考えがちなため、こういった活動はしっかりしていくべきだと思います。

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いかがでしたでしょうか、1つ1つ見ていったので長くなりましたが、自分が汗水流して稼いできた大切なお金を企業に出資して、その企業の成長と一蓮托生となり、成長すれば利益が出るし、衰退すれば資産は減ってしまうことになります。正直なところ、私から見ると株式投資をしている方の多くは自分が保有している企業がどうやって収益を稼いでいて、今後の将来に亘ってどういった経営計画を策定していて、現状どれくらいその計画が進捗しているのかを知らない方が非常に多いと思います。

株式市場は近視眼的なので、くだらない理由で株価は大きく変動したりします。期待したほど自社株買いが多くなかったとか、想定していたほど決算実績が良くなかったとか、前年同期比で減益になっていたとか、そんなことで株価は簡単に変動します。大半はトレーダーが材料をきっかけにして利鞘を稼ぐための動きなので本来気にする必要はないのですが、上がっているうちは気にしないものの株価が下がったことで途端に不安になって売るべきかどうかと焦る人がいますが、これも企業への理解が足らないことが一つの要因だといえます。

これまで見てきたように、自分が投資している企業が、どんなビジネスでどれくらい利益を出し、今後どうやって利益成長していくのかが明確になっているなら、気にするのは短期的な株価の値動きではなく、その企業がしっかりと将来の利益のためにビジネスを進めているかどうかのはずなんです。投資の利益は企業の純利益から支払われるということを理解していれば、計画がしっかり進捗できていれば株価が下がったくらいで騒ぐ必要もないですし、評価損になったからといってそれが投資の失敗でもありません。

重要なことなので改めて申し上げますが、投資の成功は評価益の増加だけではないですし、評価損になれば投資の失敗ということでもありません。重要なのは企業はどれくらいの利益を出して、どれくらいを自分たちに還元してくれるのか、この点です。これ視点は、株式投資の利益は安く買って高い時に売ることだと考えているとなかなか見えてこないものだったりしますが、本来の投資はこういうものです。安く買って高く売るのはもちろん大事ですが、それが企業の成長による恩恵で株価が上がっていくのではなく、その時々の株式市場の流れやトレンドで利益を得ようというならそれは投資ではなく投機、ギャンブルです。

俺は投機として株式を売買しているんだ、というのであれば別に何も言うことはありません。トレード自体は善でも悪でもありませんし、市場の流動性の確保という観点では必要な売買です。ただ投資だと思っていてやっているけど、実は機会に投じる行為をしているという方は少なくありませんので、今一度ご自身の考え方が投機的になっていないかどうか、考えてみていただくのも良いかと思います。次の章では、投資禅が理念としている、また矜持としている株式投資とはそもそも何なのかという点に触れて、皆様により広い視野で投資を考えるきっかけになっていただければと思います。

第3章 株式投資とは

最後となる章では、投資禅がなぜ日本株に絞って情報発信をしているのか、そして株式投資とは何かについてちょっと語っていきたいと思います。

まず根本的な話ではありますが、株式を保有する意味はなんだと思いますか?

そもそも株式とは何か、というと、株式会社が事業を行うための資金を獲得するために発行する証券のことです。企業は株式を買って出資してくれる投資家を募り、お金を工面してもらう代わりにお礼として株式を渡します。企業はそうして集めたお金で事業を行い、営業をして収益を得ます。商品を販売するためにかかったコストなどを全て差し引きいて、残った利益の一部を配当金という形で投資家に恩返しとして贈ります。また将来の利益のために事業投資をしたり、企業経営が停滞している時に備えて内部留保に貯めたりします。

あなたが普段安心して食事をしたり、夏は暑さをエアコンで緩和させたり、冬は寒さを暖房器具で緩和させたり、美味しい飲み物を飲んだり、スマートフォンで誰かに連絡できたり、ここでは無いどこかへ移動できたり、出かけ先で安心して寝ることができたりするのはどうしてでしょうか。その全ては企業というものが社会に対しより安全で満足したサービスや商品を提供しているからです。そしてその活動を支援するのが投資家であり、株式投資なんです。

企業へ出資する、企業が事業を行い利益を出し、その利益を使って株主に還元し、事業投資を行い更なる利益成長を目指す。投資家はその利益を社会に還元することでさらにお金は巡っていく。こういった一連のお金の流れこそが資本主義社会を成長させる要因です。つまり、より社会にお金を巡らせることができるのが株式という存在なんですね。

最初の方にも書きましたが、お金は経済の血液と例えられます。血液が全身に必要な酸素や栄養を運ぶように、お金は物やサービスを日本中に運びます。資本主義社会が健全に成長していくためには、この血液の循環が非常に重要なわけです。アメリカは資本主義の最たる国なので、お金のめぐりは非常に良いです。なぜなら国民は金融資産の大半を株式にしているため、配当などが定期的に家計に入ってきます。

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資金循環の日米欧比較 引用:https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjhiq.pdf

こちらは2023年8月に日本銀行が公表した資金循環の日米欧比較の中にある、日米欧の家計の金融資資産の割合を示したものです。米国は現預金は12.6%しか保有しておらず、株式は39.4%も保有しています。欧州では現預金比率は高まって35.5%まで増加しており、株式は21%です。ただ投資信託や債券も合わせるとリスク性資産は約33%で現預金と同等くらいになっています。また欧州での保険は運用系のものが多いということも考慮する必要があります。

これらに対して、日本の現預金は54%なので、金融資産の半分以上が現預金で置かれています。株式は11%、投資信託や債券も含めたリスク性資産はせいぜい13%しかありません。非常に分かりやすい構図ですが、日本人は本当に投資をしない国民だというのが明確に見えてきます。要因は色々とあると思いますが、私が銀行員時代に預金がやけに多い顧客にその理由を尋ねてみると、大体の理由は将来の不安のためとっておくのだということです。

現在の日本人の多くは、日本の経済は先行きどうなるか分からない、だから現金を多く持っていないと不安だ、とよく聞きます。そうして非常に多くの金融資産を普通預金や定期預金に預けていたり、タンス預金にしている人も多くいます。でもこれって、先ほどの血液の話で考えると、お金が一部のところに滞っているということになりますよね。血液が滞ってる、つまり血栓ができてしまい、社会全体に栄養が行き渡っていないのと同じことになります。

人間の体も血栓ができて血液の循環が思うようにいかなくなると、細胞に栄養が行かなくなり、心筋梗塞や脳梗塞といった病気になってしまい、生命の危険を及ぼす影響が出てきます。これは社会も同じことで、お金が一部のところで滞って全体に行き渡らなくなると、社会が病気にになって不健康状態、つまり不景気になっていってしまうんです。なんとなくお分かりいただけたでしょうか。つまり今の日本はそういう状態なんです。日本の将来は暗い、不安でどうなるか分からないと話していますが、その実自分たちでお金の巡りを悪くさせて結果的に社会の先行きを悪化させているわけです。

多くの日本人が自分たちの国の企業の株式を保有すれば、企業活動によって得た純利益の一部を御礼として配当金などで受け取ることができます。そうすることで会社の給与収入以外の収入ができて、お金に余裕がでます。そうしたらそのお金を製品やサービスに支払うことで別の企業に利益として流れていきます。その企業もまた自社の株式を保有している人たちに御礼としてそのお金を渡していきます。そうやって人から人へ、企業から企業へとうまくお金が流れていくことで経済はうまく成長していくのです。

つまり、日本企業の株式を保有するということは、日本の経済を発展させることにもつながるということです。そうやって多くの国民が日本株を保有して、配当金をもらって色々なことに使うことでそのお金がめぐり経済が良くなり、社会が上向いてきます。そうすれば、日本の先行きも明るくなっていくのではないでしょうか。株式を保有するということは、相互扶助であり、社会扶助でもあるということです。投資を勧める人間は、まずこの原理を理解し、説明しなければいけないと思います。

もちろん資本主義はその性質上格差を生むようにできていますので、貧富の差が発生してしまうのは仕方がありません。ですがこれは言い換えれば、お金があれば十分な生活ができるだけの力を持てるわけです。昔と違い、現在の私たちには職業選択の自由があり、選り好みをしなければいくらでも働いてお金を稼ぐこと自体はできるはずです。後はしっかりお金を貯蓄し、運用することを学べば少なくともお金に不自由ない生活を形成することはそれほど困難なことではありません。

日本の株式を保有すれば、自国でお金が巡ることになるので日本経済の発展に寄与する、企業が成長していけば株価も上がりますし、私たちの金融資産の価値も増加する。そして配当金を受け取ってそれを使うことでさらにお金を巡らせてより日本経済の発展につながる。その筈なのですが、残念なことに、現在の投資活動では多くの人は海外に投資ばかりしています。

新NISAが2024年からスタートし、多くのメディアがS&P500や全世界株式のインデックスファンドに投資しようと画一的な情報を発信してきました。S&P500への投資を推奨するのは米国は資本主義が最も効率的に進んでいる国であり、その代表的な500社の株価を平均化した指数は長期的には常に右肩上がりを続けていること、また著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏が、自らの没後は自分の資産をS&P500のインデックスファンドに投じるように妻に話しているということを引用したりされています。

ただここで補足しておきますと、バフェット氏は分散投資は無知に対するヘッジと説明しており、企業分析ができない(知識がない)のであれば、ウォール・ストリートの詐欺師たちに自分のお金を預けるよりもよほど良い結果を生むとして、インデックスファンドへの投資を説明しています。日本のアクティブファンドもそうですが、10年以上などの長期運用になってくると、大半のファンドはインデックスに勝てないというデータが出ています。もちろん中にはパフォーマンスの良い銘柄もあることにはありますが、それはファンドマネージャーの腕が良かったということではあれ、そのマネージャーがいつまでも仕事はできないので、そういったリスクはやはりあります。

また全世界株式への投資というのは、これは極論ですが特定の地域やテーマに投資をしても、浮き沈みがあるため必ずしもどの対象に投資をすれば良い利益が出るというのは分からない、ただ全世界の経済成長率は概ね3%程度で成長をし続けていることから、だったらあれこれ考えずに全世界に丸ごと投資をしてしまった方が良い、という理屈です。ある意味でも最も堅実な投資法といえます。とはいえ株式投資なので相応のリスクはありますが、個別株の変動よりは小さいので投資初心者やあまりリスクを負いたくないという方には確かに適しているとは思います。

ただ、S&P500は米国企業に投資をするため、日本国内からどんどんお金がアメリカの流出することになります。最終的には売却して日本に還元されることにはなりますが、新NISAは長期運用ですから、その資金の還流はかなり遠い未来の話になるわけで、そうなるとそれまでは日本からお金が流出し続けることになります。

これは全世界株式も同様で、最も買付がされている三菱UFJアセットマネジメントが提供している eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)では、組入上位10カ国・地域を見ると資金の6割以上がアメリカに行き、日本にはそのうち5%程度しか投資されません。つまり90%以上は海外のお金が流れていってしまうということには変わりないわけです。これでは日本経済がうまく成長していくのは難しくなってしまいます。

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eMAXIS Slim全世界株式(オールカントリー)月次レポートより 引用:https://www.am.mufg.jp/ pdf/geppou/253425/253425_202407.pdf

株式投資は日本社会の相互扶助であるということが分かると、株式を保有することの意味が大きく変わってくると思いませんか? もし国民が全員日本の企業に投資をして、企業が事業で得た純利益の一部を株式を保有する人へ還元し、還元された国民はそのお金を財やサービスに支払うようにすれば、そのお金は日本の経済社会全体を巡っていって日本の経済を潤すことになるのです。これが日本人が自国企業の株式を保有する意味です。今の日本は将来が不安だと言ってお金の流れを止め、また新NISAで老後資金を増やすためといって外国に資金を流出させているのが実態なんです。また、株式投資が相互扶助であるとすれば、株式投資で損をしたという人は、自分のためだけに投資をしている人ということがわかります。目先の評価損益で儲けた、損したといっている人たちは、自分だけが利益を得たいと考えているためにこのような判断になってしまいます。投資で儲けた、という表現を使っている時点で自分の利益が第一になっているのがわかりますし、利益をまるで運よく手に入った泡銭のように考えているため、儲けた、という表現になってしまうわけです。

もちろん、投資する企業はどこだって良いわけではありません。長期的に社会に必要とされていて、それでいてしっかりと利益成長ができることが前提です。成長せず、停滞している企業に投資をしても日本の未来は良くなりませんし、そう言った企業の株式を保有していても大した利益は得られません。そのためにも投資禅ではほぼ毎日企業分析の動画を発信しているわけですが、その大前提として、株式投資とは何なのか、という部分をご理解いただきたいなと思い、最終章とさせていただきました。

お金は幸福のために使われるべきですし、自分だけの欲求を満たすことにどれだけお金を注ぎ込んでも、人間の欲求は終わりがないので決して満たされることはありません。誰かと旅行に行ったり、ちょっと贅沢な食事をしたり、社会に貢献したり、自分ではない誰かのためにお金を使う時、人は大きな充足感を得られるというのはアメリカの科学者なども実験によって解説されています。ぜひ、株式投資を世のため、人のために行って、得られた利益は自分だけではない誰かのためにも使ってより豊かな日々を実現していただきたいと思います。

これからも投資禅はそう言ったお手伝いが出来ることを願いつつ、情報発信に努めていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。最終的な投資判断はご自身による決定で行っていただきますようお願いいたします。今回のレポートは以上になります、御精読、ありがとうございました。

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なお、投資によって発生する損益は、すべて投資家の皆様へ帰属します。 当該情報に基づいて被ったいかなる損害についても、情報提供者は一切の責任を負うことはありませんので、ご了承下さい。

これらの内容は、情報提供及び投資家教育のためのものであり、いかなる個別株や投資方法を推奨するものではありません。こちらの投資情報は説明目的の用途でのみ提供されており、すべての投資家にとって適切であるとは限りません。 詳細情報

目次
銘柄①:ヒューリック(銘柄コード:3003)
銘柄②:日本製鉄(銘柄コード:5401)
銘柄③:東京海上ホールディングス(銘柄コード:8766)
銘柄④:SBIホールディングス
銘柄⑤:三菱UFJフィナンシャルグループ
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