下表に示す銘柄やETFには、継続的に買い注文・売り注文を提示する「マーケットメイカー」と呼ばれる専門業者が存在しており、個人投資家もスムーズに取引を実現しやすくなっています。
コールの買い
コールの買いは、株価の値上がりを予想する際に有効なオプション取引の戦略です。この方法では、まずプレミアム(オプション価格)を支払い、将来あらかじめ決められた価格(権利行使価格)で株を購入する権利を取得します。損失は支払ったプレミアムに限定され、それ以上の損失は発生しません。期待通りに株価が上がれば、コールの価値が上がり、プレミアム以上のリターンを得ることが可能です。反対に、株価が思惑と外れた場合でも、プレミアムの損失に留まり、反対売買でポジションを清算することもできます。
コールの買いの基本の流れ
コールを購入
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株価が上昇した場合 コールの価値が上がり、購入価格との差益を得ることができます。
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株価が下落した場合 コールを売却してポジションを清算することで、損失をプレミアムのみに限定します。
事例1:トヨタ自動車
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トヨタ自動車の株価が2,700円台で推移している中、2,900円までの値上がりを見込んでコールを購入。
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権利行使価格2,900円のコールを1枚(100株分)19.5円で購入(コスト1,950円)。
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株価が2,900円を超え、例えば3,000円まで上昇した場合、コールの価値が上がり、プレミアム差益を得ることが可能。
権利行使価格が2,900円のコールが、株価が3,000円になった場合
コールの理論価値 = 株価 - 権利行使価格
3,000円 - 2,900円 = 100円(コール1枚の価値が100円に)
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つまり、この場合の総価値は100円×100株=1万円。
差益 = コール価値(1万円) - 購入プレミアム(1,950円) = 8,050円
損失は購入時のプレミアム(19.5円×100株分)のみに限定されるため、リスクを抑えつつ株価の値上がりによるリターンを狙うことができます。また、相場が予想に反して動いた場合でも、コールを売却して損失を限定することが可能です。
事例2:ソフトバンクG
予算の関係で値がさ株の現物を直接買えない場合でも、コールを買うことで少額の投資で利益を狙うことが可能です。
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ソフトバンクGの株価が9,700円台、最低購入単位に約100万円必要。
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権利行使価格10,000円のコールを1枚(100株分)125円で購入(コスト12,500円)
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株価が10,000円を超えて、例えば12,000円まで上昇した場合、コール価格が値上がりし、コールを売却して差益を得ることができます。
利益計算例: 仮にコール価格が1,200円に上昇した場合、差益は(1,200円 - 125円) × 100株 = 107,500円となります。
このように、少額の投資でリターンを狙える反面、株価が権利行使価格(10,000円)を超えなかった場合、コールの価値はゼロとなり、コール代金(12,500)が全損となるリスクがあります。
また、取引最終日までにコールを反対売買すれば、プレミアムの値上がり分を利益として確定できます。ただし、取引最終日を迎えた際にコールを保有している場合、株を購入する「権利」が発生します。権利行使を選択する場合、株の購入代金(約100万円)が必要となります。
注意:コールを購入する際のリスクについて コールを購入する場合、支払ったプレミアム(オプション価格)が最大の損失となります。そのため、株価が思惑どおりに動かない場合でも損失は限定的です。ただし、取引最終日までにコールを反対売買しない場合、株を購入する権利が発生します。権利行使による株の購入には相応の資金が必要になるため、購入代金を用意できない場合や購入する意図がない場合は取引最終日までに反対売買を行い、利益または損失を確定させることをおすすめします。
カバード・コール(株を保有してコールを売る:株をお得に売る)
カバード・コールは、現物株を保有した状態で、同一銘柄のコールオプションを売ることで、追加収益を狙う戦略です。この方法では、現物株における一定以上の値上がり益を放棄する代わりに、オプションのプレミアム(代金)を受け取ることができます。
この戦略では、現物株を権利行使価格で売る形で利益を確定しつつ、コールのプレミアムが追加収益となるため、通常の指値売りよりも利益が増える可能性があります。
カバード・コールの基本的な流れ
現物株を保有しながらコールを売る
取引最終日の結果による株の動き
通常の指値売りよりも収益を最大化する可能性を持つ一方で、値上がり益の制限や相場の動きへの理解が求められる戦略です。
事例:三菱UFJFGでのカバード・コール
保有している三菱UFJFGの株を対象にカバード・コールを実践する場合を考えます。
例えば、1株1,500円で購入した三菱UFJ株が、現在1,800円まで値上がりしているとします。「権利行使価格2,000円のコールオプション」を売却します。この時、プレミアム(代金)として1株あたり54.5円を受け取ります。
取引最終日の結果
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株価が2,000円を超える場合 三菱UFJ株は権利行使価格である2,000円で売却されます。さらに、受け取ったプレミアム54.5円が加わるため、実質的に1株あたり2,054.5円で売却したのと同じ効果となります。
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株価が2,000円を下回る場合 株は売却されませんが、受け取ったプレミアム54.5円はそのまま利益として手元に残ります。この場合、株価が下落してもプレミアム分が損失を一部カバーするため、単純に株を持ち続けるよりも損失を抑えられる可能性があります。
ターゲット・バイイング(株を買う現金を用意してプットを売る:株をお得に買う)
ターゲット・バイイングは、希望する購入価格と同じ権利行使価格のプットオプションを売ることで、株式をお得に購入する戦略です。この戦略では、プットを売ることでプレミアム(代金)を受け取り、株式の購入コストを実質的に下げることができます。
プットとは、将来、対象株をあらかじめ決められた価格(権利行使価格)で売る権利です。プットを売ることで、株価が権利行使価格を下回った場合にその株を買い取る義務が発生しますが、プレミアムを受け取れるため、通常の指値買いよりも購入コストを実質的に軽減できます。
ターゲット・バイイングの基本的な流れ
プットを売る
取引最終日の結果による株の動き
希望する価格で株を購入したい場合や、プレミアムを活用した収益を狙いたい場合に有効な戦略と言えます。
事例:ソフトバンクGのターゲット・バイイング
ソフトバンクグループ株にターゲット・バイイングを実施した場合を考えます。ソフトバンクグループの株価が9,800円台の時、「権利行使価格9,750円のプットオプション」を1株667円で売ったとします。
取引最終日の結果
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株価が9,750円を下回る場合 プットが行使され、ソフトバンクグループ株を1株9,750円で購入します。ただし、プレミアムとして667円を受け取っているため、実質的な購入価格は9,083円になります。
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株価が9,750円を上回る場合 プットは行使されず、受け取った667円のプレミアムがそのまま利益となります。この場合、株を購入することはありませんが、プレミアム分の収益を得られます。