米国が利下げ再開!変動に備えるETFの「つなぎ売り」戦略
金利の変動は企業業績や為替、ひいては株価に大きな影響を与える要因の1つです。特に、利下げサイクルが始まると金利が低下し、企業の資金調達コストが減少することで経済が活性化するとされますが、一方で市場全体に影響を与えるため、特定のセクターにはリスクが伴うこともあります。今回は、2025年9月のFRBによる利下げを踏まえた現状の市場環境に基づく、「つなぎ売り」戦略について解説します。
金融政策のサイクルとは?
経済成長、インフレ率、雇用状況の変化に対応するため、米国のFRBは金利の調整を頻繁に行います。景気が過熱するとインフレを抑えるために利上げが行われ、不況時には経済を刺激するために利下げが行われます。このような経済状況に応じた頻繁な政策変更は「利上げサイクル」「利下げサイクル」として知られています。一方、日本は長期的な低成長や低インフレに直面してきたため、日本銀行の金融政策の変更頻度は少ない傾向にあります。
つなぎ売りで集中投資のリスクを軽減する
株式市場では、その時々でスポットライトを浴びる大きなテーマが存在したり、セクター(業種)ごとに異なる経済条件や政策の影響を受けるため、各株式のパフォーマンスやリスクも異なってきます。
たとえば、マグニフィセント7や周辺株のパフォーマンスが良いときには、これらのハイテク株に集中投資するのは合理的かもしれません。
しかし、景気は循環し、株価も変動するため、特定のセクターに集中するリスクを避けるのが効果的な局面もあります。このような局面では、信用取引のつなぎ売りを活用し、セクター全体のリスクをヘッジする戦略が有効です。
米国株の中でも特にボラティリティが高いハイテク株に偏ったポートフォリオを構築している場合は、ハイテクセクターのETF(例:XLK)を信用取引のつなぎ売りを行うことで急激な株価の下落リスクを軽減できます。また、特定の個別銘柄に限定せず、セクター全体を対象としたリスク管理を行う際にも、ETF(上場投資信託)を活用したつなぎ売り戦略が効果的です。

利下げサイクルとセクターリスクの関係
2024年9月のFOMCで0.5%の利下げが決定され、米国は「利下げサイクル」入りとなりました。
12月には0.25%金利を引き下げるも、その後はトランプ政権による関税政策をはじめ、インフレ再燃のリスクが意識されるようになり、FRB(米連邦準備制度理事会)は追加利下げに慎重な姿勢を取るようになりました。結果として利下げは足踏み状態となり、政策スタンスは「様子見」にシフトしました。
2025年9月のFOMCでは0.25%の利下げが決定され、実に9か月ぶりとなる利下げとなりました。
金利の低下は成長セクターには好影響を与えるとされています、金融セクターにとっては利ざやが縮小するリスクもあります。たとえば、バンク・オブ・アメリカ(BAC)やJPモルガン(JPM)などをはじめとする金融機関は、金利低下による収益の圧迫が想定されます。この場合、金融セクター全体に対してXLFのようなETFを売り建てしてリスクを軽減することは考え方として合理的です。
過去の利下げを振り返ると、2019年の利下げサイクルにおいては、「マグニフィセント・セブン」が12ヶ月間で驚異的な上昇を記録。テスラは約500%、エヌビディアは150%急騰し、他の5社も軒並み大幅に上昇しました。今回の利下げ再開でも「マグ7」はさらなる上昇が期待できると考えられます。
なぜなら、ハイテク株は将来キャッシュフローの現在価値に敏感である点が挙げられます。名目・実質金利の低下は現在価値の割引率を押し下げ、バリュエーションの上振れ余地を拡大させます。特にエヌビディアやマイクロソフトのように長期的な成長期待が織り込まれている企業は、その恩恵を大きく受けやすいと言えます。

利下げは景気後退の始まり?
歴史的には、景気減速を受けた利下げ局面では経済がリセッションに突入することが多く、完全なソフトランディングとなったのは極めて稀です。
現在のマーケットの焦点は、予防的利下げに伴う株価動向とFRBが政策判断として睨む雇用統計に集中しています。
仮に株式市場全体が下落するとなれば、保有株式のポートフォリオも影響を受け、資産総額が減少する事態が想定されます。こうした全体的な下落相場に対するリスクをヘッジするためにも、つなぎ売りは効果的です。S&P500やNASDAQ100に連動するETFを売り建てることで、現物株ポジションを保有しながらも相場全体の下落に対してポートフォリオ全体のリスクを軽減できる可能性があります。
ETFを活用したつなぎ売り戦略のステップ
保有株式の確認
ポートフォリオ内の現物株を分析し、今後値下がりが想定される銘柄やセクターを特定します。
たとえば、金融政策のサイクル変更時の影響が相場に反映される時、相場変動の引き金(トリガー)となる経済指標の発表時や、あるいは市場全体の不透明感が高まっている時期には、下落リスクが高まります。
利下げサイクルの影響で特定のセクターが弱含むと予想する場合、そのセクターに集中投資するリスクを軽減する必要がある。
株式相場全体が下落すると予想する場合、買い持ちの保有株式のポートフォリオのリスクヘッジをする必要がある。
売り建て対象ETFの選定
特定のセクターリスクを回避したい場合には、該当セクターに連動するETFを売り建てするのが効果的です。市場全体のリスクヘッジを行う場合、S&P 500やNASDAQ 100に連動するETFを売り建てするのが効果的です。
特定セクターに連動するETFを選定
金融セクター:XLF
エネルギーセクター:XLE
ハイテクセクター:XLK
通信セクター:XLC
株式相場全体に連動するETFを選定
S&P500:SPY
NASDAQ:QQQ
売り建ての実行
選定したETFを信用取引で売り建てします。売り建てたETFが下落すれば、評価損のリスクをヘッジでき、保有株式の株価が下がった際にも損失をカバーできます。
つなぎ売りポジションの解消
売り建て後は市場の動向を注視し、つなぎ売りのポジションを解消するタイミングを見極めることが重要です。相場が反発する兆しが見込まれる場合や特定のリスクが解消された場合は、ポジションの決済(買い戻し)を行うことで売り建てから生じた利益を確定します。
注意!
売り建てのポジションを保有しているにも関わらず、予想に反して株価が上昇した場合、信用取引の売りのポジションを長期で持ち続けると貸株料がかさむため、この場合もポジションの解消タイミングの見極めが重要になります。ここでタイミングを誤ってしまうと、想定外の損失を招くことにもにつながります。
市場環境の変化への対応
今回の利下げサイクルでは、まだ利下げの期間や幅に関して不確定な要素が多く、市場はこうした不透明性を嫌います。今後、予期せぬ金融政策の変化や経済イベント、例えば米国の財政上限問題など、突如市場に影響を与えるリスクにも備えることが重要です。市場の予測や金融機関の見通しを参考にしつつ、予測外の変動にも対応できるような体制づくりをしましょう。

信用取引の売り建て(つなぎ売り)は個別銘柄や特定のセクターで柔軟なリスクヘッジをする場合は特に有効です。また、ベア・インバース型ETFの買いは、リスクが限定されていて、特に投資初心者やコストを抑えたい場合に使いやすいです。どちらの選択で何に資金を投じるのが良いかは、ご自身のニーズや市場の状況によって異なります。
※空売りとの違いつなぎ売りは保有しているポジションを守るためのリスクヘッジ手法であり、防御的な戦略です。一方で、空売りは株価の下落を狙った攻めの投資手法で、株価が下がることで積極的に利益を狙うことを目的としています。
つなぎ売りをもう1度復習する:信用取引を使った「つなぎ売り」を攻略!
まとめ
米国株信用取引での「つなぎ売り」は、セクターリスクや株式相場全体の下落をヘッジし、ポートフォリオを守るために効果的な戦略です。2024年9月から始まったFRBの利下げサイクルに対応し、特に影響を受けやすいと考えられるセクターに対しては、ETFを活用してリスクを分散させることが有用です。市場環境が変化したり、利下げの影響が今後の市場に顕在化してくる可能性は大いにあるため、柔軟に対応しながら、つなぎ売りを上手く活用して市場変動に備えましょう。
2025年9月19日更新
これらの内容は、情報提供及び投資家教育のためのものであり、いかなる個別株や投資方法を推奨するものではありません。こちらの投資情報は説明目的の用途でのみ提供されており、すべての投資家にとって適切であるとは限りません。 詳細情報
