米ビッグテック4社の「AI投資」は計30兆円!筆頭サプライヤーはエヌビディア!後追う数社にも注目、あの日本企業も?
AIブームの持続性を占う上で重要な指標が一つある。AI投資の主役、米ビッグテック4社の設備投資額だ。直近のアナリスト予想に基づけば、ビッグテック4社の2025年の設備投資額は合計で2,000億ドル(約31兆円)に上る見込みだ。4社の巨額な設備投資資金は、どこに向かうだろうか。
(ビッグテック4社は、 $マイクロソフト (MSFT.US)$ 、 $アルファベット クラスA (GOOGL.US)$ 、 $メタ・プラットフォームズ (META.US)$ 、 $アマゾン・ドットコム (AMZN.US)$ )
今回の決算発表会でビッグテック4社は、設備投資の増額理由について、ともにAI向け投資を増やすためだと説明した。AI半導体王者のエヌビディアが恩恵を受けることは容易に推測されよう。ビッグテック4社の上位仕入れ先企業リストでは、いずれもエヌビディアが首位で、その推測は理にかなっていることが示された。
他方、エヌビディアと同様に、4社の上位仕入れ先企業リストに全部入っている企業も、数社いた。これらの企業もAI投資ブームの恩恵を享受できよう。加えて、サプライチェーンの流れからすると、エヌビディアをはじめとするこれらの企業のサプライヤーにも、ビッグテック4社の設備投資の恩恵が及ぶだろう。米国の半導体企業のほか、あの日本企業もリスト入りしている。
ビッグテック4社の上位仕入先企業リスト
Bloombergが提供している企業のサプライヤーリスト(※)を用いて、ビッグテック4社のそれぞれの上位仕入先企業リストをまとめた。
Bloombergが提供している企業のサプライヤーリスト(※)を用いて、ビッグテック4社のそれぞれの上位仕入先企業リストをまとめた。
(※Bloombergが各社の資料を基にまとめたもの。各社のデータ基準日は必ずしも一致しないため、上位仕入れ企業リストはあくまでも参考データとなる。他方、データの基準はおおむね2023年後半から2024年直近までとなっており、比較的足元の状況を反映していると言える。)
まず、ビッグテック4社の上位仕入先企業では、いずれも $エヌビディア (NVDA.US)$ が首位となっている。4社が競うようにAI向けインフラ投資を拡大しているが、サプライヤーリストにも現れていると言えよう。
次に、エヌビディアと同様に4社のリストに全部入ったのは、SKハイニックスと、 $アドバンスト・マイクロ・デバイシズ (AMD.US)$だ。韓国半導体大手のSKハイニックスは、AI駆動に使う高性能半導体メモリー市場において世界シェア1位で、同社のAI半導体メモリーの受注は2025年分までほぼ埋まっている。競合のサムスン電子や $マイクロン・テクノロジー (MU.US)$が急いでAI半導体メモリーの生産を強化しているのは、需要が非常に旺盛なためだ。
エヌビディアの競合であるAMDは、2023年12月にエヌビディア製のAI半導体「H100」に対抗する「MI300X」を打ち出した。エヌビディア製品が入手困難(今はやや緩和)で比較的高額でもあるため、ビッグテック4社はAMDの製品も購入している。エヌビディアへの過度な依存を減らそうとしている動きも背景にあろう。
次に、4社のうち、3社の上位仕入先企業に入っているのは、OEM大手の鴻海精密工業だ。半導体大手の $ブロードコム (AVGO.US)$と電子部品メーカーの $セレスティカ・インク (CLS.US)$は、2社のリストに入った。ブロードコムは3月の決算発表会で、2024年度の半導体売上高に占めるAI向け比率の見通しについて、従来の25%から35%に引き上げた。
エヌビディア、AMD、SKハイニックスの上位仕入先企業リスト
ビッグテック4社の上位仕入先企業リストに全部入ったのはエヌビディア、AMD、SKハイニックスの3社だ。3社はビッグテック4社から受注した場合、自社のサプライヤーに発注するだろう。よって、3社の上位仕入先企業は、間接的にビッグテック4社の設備投資拡大の恩恵が期待できるとみられる。
ビッグテック4社の上位仕入先企業リストに全部入ったのはエヌビディア、AMD、SKハイニックスの3社だ。3社はビッグテック4社から受注した場合、自社のサプライヤーに発注するだろう。よって、3社の上位仕入先企業は、間接的にビッグテック4社の設備投資拡大の恩恵が期待できるとみられる。
3社の上位仕入先企業リストを確認してみると、エヌビディアとAMDの場合は、半導体受託生産世界最大手の $台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング (TSM.US)$が首位に入っている。エヌビディアとAMDはファブレスのため、その生産を主に担うTSMCが担っているためだ。そこで、TSMCの上位仕入先企業も併せて確認することにした。
上記のリストとビッグテック4社(半導体大手の大口顧客)のリストを比較してみると、半導体産業におけるサプライチェーンは川上へ行けば行くほど関わる企業が増えており、日本企業も多数入っていることが分かる。たとえば、 $東京エレクトロン (8035.JP)$ や $アドバンテスト (6857.JP)$ 、 $SCREENホールディングス (7735.JP)$ 、 $レーザーテック (6920.JP)$ など日本を代表する半導体企業や半導体素材大手の $信越化学工業 (4063.JP)$だ。ビッグテック4社の設備投資拡大は、これらの日本企業にも恩恵が及ぶこととなろう。
恩恵が期待できる主要企業の目標株価との乖離率
上記の2つの表に上がっている銘柄のうち、韓国や台湾に上場している銘柄を除く主要企業について、直近一カ月間における目標株価(Bloomberg集計)の変化率と目標株価との乖離率をまとめた。米国株ではAMDを除けば、目標株価は直近1カ月で引き上げられている。AMDは目標株価が引き下げられたが、目標株価との乖離率は上昇した。
上記の2つの表に上がっている銘柄のうち、韓国や台湾に上場している銘柄を除く主要企業について、直近一カ月間における目標株価(Bloomberg集計)の変化率と目標株価との乖離率をまとめた。米国株ではAMDを除けば、目標株価は直近1カ月で引き上げられている。AMDは目標株価が引き下げられたが、目標株価との乖離率は上昇した。
恩恵が期待できる主要企業の業績動向(米国上場企業)
● $エヌビディア (NVDA.US)$
◆決算動向(2月21日に決算発表、次回は5月22日)
・11-1月期(4Q)の売上高は3倍余りに増え、過去最高水準に達した。ビッグテック企業のAI向け投資により、エヌビディアの業績が“倍々ゲーム”で伸びている。
・2-4月(1Q)の売上高ガイダンスは240億ドル±2%で、市場予想(219億ドル)(Bloomberg集計、以下同様)を大きく上回った。同社のAI半導体に対する需要は引き続き、堅調であることが示された。
◆世界AI半導体市場で8割以上のシェアを持つ。生成AIのトレーニング用で同社製品が優位とされているが、2月の決算ではAI推論向けでも同社製品が多く使用されていることが判明した。AI導入が一段進んだ場合も、同社が優位性を維持する可能性があることが示唆された。
◆決算動向(2月21日に決算発表、次回は5月22日)
・11-1月期(4Q)の売上高は3倍余りに増え、過去最高水準に達した。ビッグテック企業のAI向け投資により、エヌビディアの業績が“倍々ゲーム”で伸びている。
・2-4月(1Q)の売上高ガイダンスは240億ドル±2%で、市場予想(219億ドル)(Bloomberg集計、以下同様)を大きく上回った。同社のAI半導体に対する需要は引き続き、堅調であることが示された。
◆世界AI半導体市場で8割以上のシェアを持つ。生成AIのトレーニング用で同社製品が優位とされているが、2月の決算ではAI推論向けでも同社製品が多く使用されていることが判明した。AI導入が一段進んだ場合も、同社が優位性を維持する可能性があることが示唆された。
● $アドバンスト・マイクロ・デバイシズ (AMD.US)$
◆決算動向(4月30日に決算発表)
・1-3月期(1Q)実績は市場予想を上振れ、2Q売上高ガイダンスもおおむね市場予想通り。
・会社側はデータセンター部門のGPU売上高見通しについて、従来の35億ドルから40億ドルに上方修正した。ただ、市場予想の約60億ドルには及ばなかった。エヌビディアも当初は生産問題を抱え、需要に対して供給が追い付かない時期があったが、AMDも生産初期で同様な問題に直面しているようだ。売上高見通しの上方修正は、生産問題が次第に改善されていくことを示唆する。
◆エヌビディアと同様にAI半導体を手掛ける。ビッグテック4社のAI半導体向け投資による恩恵はエヌビディアほどでないが、中期的には業績の押上げが期待できよう。
◆決算動向(4月30日に決算発表)
・1-3月期(1Q)実績は市場予想を上振れ、2Q売上高ガイダンスもおおむね市場予想通り。
・会社側はデータセンター部門のGPU売上高見通しについて、従来の35億ドルから40億ドルに上方修正した。ただ、市場予想の約60億ドルには及ばなかった。エヌビディアも当初は生産問題を抱え、需要に対して供給が追い付かない時期があったが、AMDも生産初期で同様な問題に直面しているようだ。売上高見通しの上方修正は、生産問題が次第に改善されていくことを示唆する。
◆エヌビディアと同様にAI半導体を手掛ける。ビッグテック4社のAI半導体向け投資による恩恵はエヌビディアほどでないが、中期的には業績の押上げが期待できよう。
● $台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング (TSM.US)$
◆決算動向(4月18日に決算発表)
・1-3月期(1Q)の売上高はこの1年余りで最も高い伸びとなり、市場予想を上回った。2Q売上高ガイダンスも市場予想を上振れした。
・経営陣はAI関連の需要は引き続き、急増していると表明。同時に「TSMCはAIアプリケーションを実現するうえで重要な存在だ」と強調し、「ほぼすべてのAIイノベーションがTSMCと協力して、エネルギー効率の高いコンピューティングパワーに対するAI関連の飽くなき需要に取り組んでいる」と明かした。
・5月10日に発表した4月の売上高は前年同月比で60%増となり、好調だった。
◆半導体受託生産で世界最大手。AI半導体を手掛けるエヌビディアやAMDはファブレスのため、実際の生産はTSMCやサムスン電子、グローバルファウンドリーズなどの半導体受託生産企業が担う。業界最大手であり、かつ最先端技術でリードしているTSMCは最も恩恵を受けることとなろう。
◆決算動向(4月18日に決算発表)
・1-3月期(1Q)の売上高はこの1年余りで最も高い伸びとなり、市場予想を上回った。2Q売上高ガイダンスも市場予想を上振れした。
・経営陣はAI関連の需要は引き続き、急増していると表明。同時に「TSMCはAIアプリケーションを実現するうえで重要な存在だ」と強調し、「ほぼすべてのAIイノベーションがTSMCと協力して、エネルギー効率の高いコンピューティングパワーに対するAI関連の飽くなき需要に取り組んでいる」と明かした。
・5月10日に発表した4月の売上高は前年同月比で60%増となり、好調だった。
◆半導体受託生産で世界最大手。AI半導体を手掛けるエヌビディアやAMDはファブレスのため、実際の生産はTSMCやサムスン電子、グローバルファウンドリーズなどの半導体受託生産企業が担う。業界最大手であり、かつ最先端技術でリードしているTSMCは最も恩恵を受けることとなろう。
● $マイクロン・テクノロジー (MU.US)$
◆決算動向(3月21日に決算発表)
・3-5月期(3Q)の売上高見通しが市場予想を大幅に上振れした。
・経営陣は、「マイクロンはAIがもたらす複数年にわたるビジネスチャンスについて、半導体業界で最大の受益者の一つだと信じている」とコメント。
◆半導体メモリーを手掛ける。AI半導体メモリー市場においては、世界シェア首位のSKハイニックスと2位のサムスン電子に次いで、3位となっている。今年2月に、エヌビディアの次世代AI半導体「H200」に使用する「HBM(広帯域メモリー)3E」の量産を開始した。
◆決算動向(3月21日に決算発表)
・3-5月期(3Q)の売上高見通しが市場予想を大幅に上振れした。
・経営陣は、「マイクロンはAIがもたらす複数年にわたるビジネスチャンスについて、半導体業界で最大の受益者の一つだと信じている」とコメント。
◆半導体メモリーを手掛ける。AI半導体メモリー市場においては、世界シェア首位のSKハイニックスと2位のサムスン電子に次いで、3位となっている。今年2月に、エヌビディアの次世代AI半導体「H200」に使用する「HBM(広帯域メモリー)3E」の量産を開始した。
● $ブロードコム (AVGO.US)$
◆決算動向(3月7日に決算発表)
・11-1月期(1Q)の売上高は市場予想を上振れ。半導体部門の売上高は市場予想を下振れ。通期売上高見通しは従来予想並みだった。
・会社側は通期の半導体売上高に占めるAI向け割合の見通しについて、従来の25%から35%に引き上げた。経営陣は、同社ネットワーク製品に対するAIデータセンターの需要は旺盛で、カスタムAI半導体はクラウドコンピューティングの大手プロバイダー(ビッグテック企業)からの引き合いが強いとコメント。
◆エヌビディアやAMDにようにAI半導体は手掛けていないが、AI向けの大規模言語モデルの学習に使用されるネットワーキング部品供給やカスタムチップ設計業務を手掛ける。
◆決算動向(3月7日に決算発表)
・11-1月期(1Q)の売上高は市場予想を上振れ。半導体部門の売上高は市場予想を下振れ。通期売上高見通しは従来予想並みだった。
・会社側は通期の半導体売上高に占めるAI向け割合の見通しについて、従来の25%から35%に引き上げた。経営陣は、同社ネットワーク製品に対するAIデータセンターの需要は旺盛で、カスタムAI半導体はクラウドコンピューティングの大手プロバイダー(ビッグテック企業)からの引き合いが強いとコメント。
◆エヌビディアやAMDにようにAI半導体は手掛けていないが、AI向けの大規模言語モデルの学習に使用されるネットワーキング部品供給やカスタムチップ設計業務を手掛ける。
● $アプライド・マテリアルズ (AMAT.US)$
◆業績動向(2月16日に決算発表、次回は5月16日)
・11-1月(1Q)の売上高は市場を上振れ。2Qの売上高ガイダンスは市場予想を上回る強気見通しとなった。
・経営陣は、「広帯域幅メモリー(HMB、AI半導体メモリー)は、今後数年間で50%の年平均成長率で成長すると予想されており、自社にとって大きな事業機会となる」と表明した。DRAM市場におけるシェア拡大は今後も続く見通しで、2024年度はHBMパッケージングの収益が前年度の4倍になる見込みだと示した。
◆半導体製造装置大手。サムスン電子やTSMC、マイクロンなどが主要顧客で、AI向け投資拡大による恩恵を間接的に享受できよう。経営陣が示したように、AI半導体メモリーに対する堅調な需要は今後の業績拡大につながるだろう。
◆業績動向(2月16日に決算発表、次回は5月16日)
・11-1月(1Q)の売上高は市場を上振れ。2Qの売上高ガイダンスは市場予想を上回る強気見通しとなった。
・経営陣は、「広帯域幅メモリー(HMB、AI半導体メモリー)は、今後数年間で50%の年平均成長率で成長すると予想されており、自社にとって大きな事業機会となる」と表明した。DRAM市場におけるシェア拡大は今後も続く見通しで、2024年度はHBMパッケージングの収益が前年度の4倍になる見込みだと示した。
◆半導体製造装置大手。サムスン電子やTSMC、マイクロンなどが主要顧客で、AI向け投資拡大による恩恵を間接的に享受できよう。経営陣が示したように、AI半導体メモリーに対する堅調な需要は今後の業績拡大につながるだろう。
2024年5月10日作成 マーケット・アナリスト Amelia
出所:会社資料およびBloombergよりmoomoo証券作成
出所:会社資料およびBloombergよりmoomoo証券作成
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