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マイナス金利解除前後、日銀金利上昇の影響は?

閲覧数5242024/03/20

2016年1月、日本銀行はデフレーションを克服し経済を再活性化するために、短期金利をマイナス0.1%に設定するマイナス金利政策を開始しました。これは、金融機関が日銀に預け入れる資金の一部に対して手数料を徴収するという政策です。その年の9月には、長期金利(10年国債の利回り:03/14時点で0.77%)を約0%に誘導する量的・質的金融緩和政策をさらに推進し、「イールドカーブ・コントロール」と呼ばれる新しい政策を導入しました。この政策によって、短期金利と長期金利の両方をコントロールし、経済活動を促進させ、物価の上昇率を安定的に2%以上に保つことを目指しています。この政策は今も継続されており、経済の回復と安定した物価上昇を目標に掲げています。

(一)日本がマイナス金利政策を導入した主な目的:

  1. デフレ脱却:長年にわたるデフレーションから抜け出し、物価を持続的に上昇させることで、経済活性化を図る。

  2. 経済活動の刺激:短期および長期金利を低く抑えることで、企業や個人の貸借コストを下げ、投資や消費を促進する。

  3. 2%のインフレ目標の達成:物価上昇率2%を安定的に維持し、デフレによる経済への悪影響を防ぐことを目指す。

  4. 金融市場の安定:イールドカーブ・コントロールを通じて、長期金利の過度な変動を抑え、金融市場の安定を図る。

日銀はこの政策を継続し、景気回復と物価上昇を目指していますが、マイナス金利政策の効果には議論があり、副作用に対する懸念も指摘されています。

春闘での賃上げ交渉が活発化する中、日銀のマイナス金利政策の解除時期に注目が集まっています。「マイナス金利はいつ解除されるのか?」という疑問がありますが、3月18日か19日の金融政策決定会合がそのタイミングとなるかもしれません。

合わせて読みたい:2月の企業物価指数から読み解く、春闘での給料アップ・マイナス金利解除?

(二)マイナス金利解除の影響

金融市場では、日本銀行が近い将来にマイナス金利政策を解除するという見方が強まっていますが、それが実現したとしても、市場の不確実性がすべて解消されるわけではありません。特に、マイナス金利政策の解除後の金融政策の進路には大きな不透明感が残ります。

日銀が目標である2%の物価上昇率を達成したと宣言し、マイナス金利政策を解除する可能性はありますが、継続して2%のインフレ率を維持できるかは不確実です。日銀は、インフレ率やインフレ期待が安定して2%に達することを確信せず、見切り発車で政策変更を行う可能性があります。

政策金利については、マイナス金利政策を解除した後もしばらくはゼロ近傍に据え置くとの見通しを日銀は示しています。これは、市場における追加利上げの予想を和らげ、金融市場の安定を維持するためのメッセージと解釈されますが、2%の物価上昇率目標が実際に確実に達成されれば、中立的な政策金利は2%を超える水準に設定されるべきだとの考え方もあります。

この状況下では、マイナス金利政策の解除後に政策金利が迅速に引き上げられるという観測が市場に広がり続ける可能性があります。市場参加者は、日銀がどのように2%の物価目標達成を評価し、金利政策を調整するかを注視しているため、金融市場では次のような影響や予想が考えられます:

(1)株式市場への影響:

  • 金融緩和が解除されると、通常、中央銀行が金利を引き上げることを意味します。金利が上昇すると、借り入れコストが高くなり、企業の成長が鈍化する可能性があります。また、金利が上昇すると、債券の利回りが上昇し、債券市場への投資がより魅力的になることがあります。これにより、株式市場から資金が流出する可能性があり、株価が下落する原因となることがあります。

  • 金融緩和期には、成長株が好調なパフォーマンスを示すことが多いですが、金利が上昇すると、キャッシュフローの割引率が高くなり、成長株の将来の収益が低く評価される傾向があります。これにより、バリュー株や高配当株が相対的に魅力的になることがあります。

  • 金利上昇により銀行の収益が改善し、預金残高や融資額が増加する見込みです。また、春闘で大企業の賃上げが行われると、預金残高がさらに増加し、設備投資が活況になることが予想されています。金利スワップ市場でも追加利上げの期待が高まっており、日銀が利上げを実施すれば銀行株にはさらなるポジティブな影響が期待されています。

銀行業の月間株価--moomoo証券
銀行業の月間株価--moomoo証券

以下に挙げるのは、株式市場で取引されている銀行関連銘柄の一部です。各リンクをクリックすることで、それぞれのリアルタイムチャートをご覧いただけます。

8306 三菱UFJフィナンシャル・グループ

8316 三井住友フィナンシャルグループ

8411 みずほフィナンシャルグループ

8714 池田泉州ホールディングス

7184 富山第一銀行

8308 りそなホールディングス

8359 八十二銀行

8750 第一生命ホールディングス

8795 T&Dホールディングス

(2)円相場の動向

金融緩和政策の解除によって、通常は円高が引き起こされる可能性があります。なぜかというと、金利の上昇が予想されることから、日本の通貨や資産が海外投資家にとって魅力的になり、円への需要が高まるためです。ただし、実際の市場反応は他の経済要因や国際情勢によって変動することがあるため、予測には常に不確実性が伴います。ですので、投資に際してはリスクの分散に留意することが重要です。

過去の具体的な例として、2006年から2007年にかけての日本銀行の金融政策の動向を挙げることができます。当時、日本銀行はゼロ金利政策を解除し、段階的に金利を引き上げました。

  • 2006年7月: 日本銀行は6年ぶりに金利を引き上げ、ゼロ金利政策を解除しました。これにより、政策金利は0.25%に設定されました。

  • 2006年7月以降: その後も段階的な金利引き上げが行われ、2007年2月には金利が0.5%に引き上げられました。

  • 円相場の動き: 金融緩和解除のアナウンスがあった2006年中頃から円は対ドルで徐々に強まり、2007年には一時期120円台から110円台にまで上昇しました。この時期は円高が進行する局面が見られました。

(三)【速報】 3月19日日銀会合について

3月19日に行われた日銀の金融政策会合では、大規模な金融緩和政策の修正が発表されました。具体的には、

・マイナス金利解除

・YCC撤廃

・ETF/REIT買入終了

が宣言されました。これらの政策変更は通常、国内通貨の価値を高める方向に作用すると予想されますが、意外にも日本円は円安となりました。

植田日銀総裁の発言が終わりドル円は150円台に突入しました。
植田日銀総裁の発言が終わりドル円は150円台に突入しました。

YCCは長短金利操作「イールドカーブコントロール」(Yield Curve Control)の略で、日銀が一定の金利目標を設定して国債の利回りをコントロールする政策です。YCC撤廃とは、日銀がこのイールドカーブコントロール政策を終了することを意味し、市場による金利の決定に移行することを示します。

ETF/REIT買入終了:ETFは「上場投資信託」(Exchange-Traded Fund)、REITは「不動産投資信託」(Real Estate Investment Trust)の略です。日銀がETFやREITの買入を終了すると発表した場合、これは日銀がこれらの金融商品の市場介入を停止することを意味します。これまでのところ、日銀は金融市場の安定化や資産価格のサポートを目的として、ETFやREITを積極的に購入してきました。

なぜマイナス金利の解除が銀行株を下落させるのか?

2024年3月19日、TOPIX-17銀行業指数は始値197.96から一時201.14まで上昇しましたが、終値は197.92で取引を終えました。この動きは、日銀が金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決定したことが影響していると考えられます。ただし、追加的な利上げについての言及がなく、「当面は緩和的な金融環境が継続される」との発表を受けて、銀行株に対して慎重な姿勢を示したと考えられます。

マイナス金利解除前後、日銀金利上昇の影響は? -1

一方、日本銀行がマイナス金利政策を解除することを受けて、大手銀行をはじめとする民間金融機関は普通預金の金利引き上げを検討しています。2016年2月にマイナス金利政策が導入された際、銀行は普通預金の金利を0.02%から0.001%に下げましたが、政策金利が正の範囲に戻ることで、銀行は預金金利を再び引き上げ、「金利が存在する正常な状態」へと舵を切ることを検討しています。この動きは銀行の収益構造にとって通常は望ましい変化であり、銀行株にプラスの影響を及ぼす可能性があります。

出典:www.nikkei.com
出典:www.nikkei.com

なぜ円上昇を予期しながら円安が進むのか?

日銀の政策修正にも関わらず円安が進行する理由は、市場の複雑なダイナミクスに根ざしています。以下はその主要な要因です。

市場予測の逆行

植田日銀総裁は「極めて緩和的な金融環境が続く」と述べており、市場は追加の利上げがない限り、緩和的な金融環境が継続すると解釈しました。これにより、円売り・ドル買いの動きが強まり、円安が進行しました。

金利差の拡大:米国を含む他の国々はすでに金融引き締めを実施しており、日本の緩和姿勢との金利差が円を売る動因となっています。この金利差が存在する限り、円高に転じるのは難しい状況が続きます。

市場の事前予想とポジショニング:日銀の決定は市場の事前予想通りであり、マイナス金利政策の解除を予期して円安が進行していました。発表後の一時的なドルの反落とその後の円売りの活発化は、市場の複雑なポジショニングを反映しています。

今後の予想

日銀の利上げと米国の利下げが、ドル円の長期的な動向を決定する大きな要因です。現在の金利差が埋まるかどうかに注目が集まりますが、それが現実になるのはまだ先の話と見られています。

  • 日銀は物価安定の目標を維持したいため、金融緩和の即時終了は考えにくい。現在の緩和姿勢が続く限り、円高に転じるのは困難です。来月のCPI指数やインフレ指標、およびインフレ状況に注目する必要があります。

  • 米国の金融政策はFRBの動向によって決定されますが、利下げはまだ遠いと予想されています。そのため、米利下げの話題が出るまでは、ドル円の長期的な上昇トレンドが継続すると考えられます。

次回のFOMCやパウエル議長の発言から、金融政策の今後の方向性に関する手がかりを得ることが重要です。

よくあるご質問
2024年3月春闘の最新情報(3月15日更新)
成長株とは?成長株の見つけ方は?

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