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財務相「EVに走行距離課税」発言に国民の不満噴出!「自動車の税金」の複雑怪奇

鈴木俊一財務相が2022年10月20日に参議院予算委員会で、EV(電気自動車)に対する「走行距離課税」導入の可能性について発言したことが物議を醸しています。わが国における自動車に関する税制のあり方は非常に複雑でわかりにくいものになっています。そこで、現行の税制の概要と問題点について整理して解説します。
クルマを持っているだけでこんなに税金がかかる
自動車は、所有するだけで税金がかかります。
かかる税金の種類を「購入・新規登録時」、「保有期間中(毎年)」、「車検時」のそれぞれについてまとめると、以下の通りです。
【購入・新規登録時】
・自動車税・軽自動車税(環境性能割)
・自動車重量税
・消費税
【保有期間中(毎年)】
・自動車税・軽自動車税(種別割)
【車検時】
・自動車重量税
なお、「自動車重量税」は国税、「自動車税」は都道府県税、「軽自動車税」は市町村税です。
また、これに加え、走行の際にガソリンを入れれば、ガソリン税がかかります。ガソリン税はガソリン価格に含まれており、そこにさらに消費税がかかります。しかも、自動車を持つと、これらの税金の負担に加え、「自賠責保険」のほか「任意保険」にも加入しなければならず、2年に1回車検を受けなければなりません。
このように、自動車を取得・保有すると、維持費だけで大きなコストがかかります。都市部を中心に若者の自動車離れが進むのも、むべなるかなといわざるをえません。
また、地方では自動車が日常の交通手段として必要不可欠なところが多く、自動車を所有することの経済的負担の重さが大きな問題となっています。
なぜこんな複雑なのか?自動車関連税制の構造的問題
自動車税・軽自動車税、自動車重量税については、それぞれ問題点が指摘されます。
◆自動車税・軽自動車税|大事に乗るほど税金が高くなる
まず、自動車税・軽自動車税はもともと、1950年にいわゆる「ぜいたく税」の性質をもつものとして導入されたものです。当時は、自動車は一部の限られた富裕層だけが持っているぜいたく品でした。
しかし、現在、自動車は一般国民に広く普及し、特に公共交通機関が発達していない地方においては日常生活や仕事にとって有効な交通手段として必要不可欠な交通手段です。
ところが、JAFが2022年10月18日に公表した「 自動車税制改正に関する要望書 」によれば、日本の自動車取得・保有についてかかる税金(自動車税・自動車重量税)が欧米諸国(イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ)と比べ約2.2~31倍にのぼることが指摘されています。
さらに、自動車税・軽自動車税は、中古車ほど税金が高くなっていきます。すなわち、新車登録から13年経過すると税額が高くなり、長く大切に乗り続けることでかえって税金が高くなってしまう計算になります。
しかも、2019年10月に「自動車税の恒久減税」が行われましたが、対象となっているのは2019年10月以降に新車新規登録を受けた自家用車に限られています。
◆自動車重量税|存在意義も税率も正当性があやしい
自動車重量税も、自動車税・軽自動車税と同様、新規登録から13年経過すると税率が高くなっていくという問題があります。
それに加え、自動車重量税は、その正当性自体が疑問視されています。
どういうことかというと、自動車重量税は、もともと、ガソリン税等とともに、「道路特定財源」であり、使い道が道路の整備・補修の目的に限定されていました。自動車は道路に負荷をかけるので、道路の維持・補修のためのコストを自動車所有者に転嫁する制度として、自動車重量税が設けられたのです。
それが、いわゆる「構造改革路線」の下、2009年から使途を定めない「一般財源」へと移行しました。
自動車重量税は元来、道路整備のための財源としての役割を担ってきました。しかし、その後、道路の整備水準が向上し、かつ、公共事業の抑制もあり、税収が歳出を大幅に上回るようになりました。それに伴い、「道路特定財源」ついて見直しを行い、使途を定めない「一般財源」に移行されたのです。 国土交通省HP で、その経緯についての解説がされています。
「道路特定財源」としての存在意義が薄れたのであれば、自動車重量税を廃止するのが筋であったはずです。しかし、実際には廃止されず「一般財源」に移行され、税率も維持されました。このことについての理由として挙げられるのが「厳しい財政事情」「環境面への影響の配慮」です。
すなわち、2009年の「一般財源化」を境に、自動車重量税は存在意義がすり替わったということです。
しかも、税率についても、疑義が呈されています。現行の税率は、自動車重量税が道路特定財源だったときに、道路整備の財源が不足することを理由に暫定的に引き上げられたものが、「一般財源化」の後も特段の理由もなく引き継がれているものです(当分の間税率)。
このように、自動車重量税は、存在意義、税率のいずれについても疑義が指摘されています。
財務相「EV走行距離課税」発言の問題点
鈴木俊一財務大臣は、2022年10月20日の参議院予算委員会において、EVに対する課税のあり方として「走行距離課税は一つの考え方である」と述べました。
走行距離課税とは、自動車の走行距離に応じて税金を課する制度です。その理由として、以下の2点が指摘されています。
・EVにはガソリン税のような燃料に対する課税がない
・EVは車体が重いため、道路の維持補修の負担が増大する
この発言は、EVに関する課税の問題にとどまりません。もし、その場限りの思いつきでなければ、あらゆる自動車について「取れるところから取る」という姿勢を鮮明に打ち出したと解釈できるものです。だからこそ、多くの批判にさらされているとみることができます。
◆「EVにはガソリン税のような燃料に対する課税がない」の問題点
まず、「EVにはガソリン税のような燃料に対する課税がない」という指摘ですが、これは、ガソリン税の正当性を当然の前提としている点で問題があります。
すなわち、ガソリン税は「自動車重量税」と同じく、もともと「道路特定財源」だったのが2009年に「一般財源化」されたものであり、その時点で存在意義がすり替えられ正当性が疑問視されるものです。また、ガソリン税にも「当分の間税率」の問題があります。
◆「EVは車体が重いため、道路の維持補修の負担が増大する」の問題点
次に、「EVは車体が重いため、道路の維持補修の負担が増大する」という指摘ですが、この点については、以下の2つの問題があります。
・自動車重量税との二重課税の問題が生じる
・ガソリン車に対する課税との整合性がとれない
第一に、自動車重量税との整合性がとれず、二重課税の問題が生じるということです。
自動車重量税は、自動車の重量に応じて課税されており、これは、道路に対する負荷の大きさによるものです。走行距離課税を採用する理由が、EVの車体が重いからということであれば、自動車重量税との「二重課税」との批判を免れません。
第二に、ガソリン車に対する課税との整合性がとれないことです。
EV車もガソリン車も、車体重量の分だけ道路に対する負荷が大きくなるのはまったく同じです。そうだとすれば、EV車にもガソリン車にも同じように走行距離課税を行わなければ整合性がとれません。
しかも、もし、ガソリン車もEV車も同様に走行距離課税を導入するのであれば、ガソリン車はこれまでより負担がさらに増大することになります。
このように、わが国の自動車関連税制は、その正当化根拠も含め、きわめて複雑かつわかりにくくなっています。しかし、今後EVの導入が進んでいくにつれ、既存の税制の問題を先送りにすることが困難になっていくことが予想されます。それらを克服し、合理的かつ公平で分かりやすい税制へと再構築していくことが求められています。
作者:幻冬舎ゴールドオンライン
最終更新:11/8(火) 11:46
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